血のにじむような努力。死に物狂いの稽古なしでは、番付を上げることはできない。ただ、こういう言葉もある。「運も実力のうち」。今年は休場者が多数出た。つまり、不戦勝も多かった。一番多かったのは3人が3回で並んだが、年間白星の割合で「ラッキーマン」の称号を平幕の正代(26=時津風)が得た。

 複雑な気持ちが交差している。現在、3場所連続で不戦勝があり「ラッキーですね」とにやり。ただ「相手がケガをされてるので、あまり喜んでいいものではない」と気遣った。しかし「勝ちは勝ちなので。もらえる物はもらいたいですけどね」と、何とも言えない表情を見せた。

 3場所連続だけでもラッキーだが、さらにラッキーなことが九州場所で起きた。14日目に妙義龍が休場したため不戦勝となり、その白星で勝ち越しを決めた。「後半の後半だったのでうれしかったですね」と、本音を漏らした。ただ、やはり素直には喜べなかった。「その日、応援に駆けつけた人には申し訳ないですよ」。土俵の上で勇姿を見せられないことを悔やんだ。謙虚だからこそ、運も味方しているのかもしれない。【佐々木隆史】(おわり)