郷土の英雄の座は譲らない! 日本相撲協会は24日、名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)の新番付を発表。5月の夏場所で初優勝した朝乃山(25=高砂)は、自己最高位の東前頭筆頭に番付を上げた。富山県出身では横綱太刀山以来、103年ぶりの優勝だったが、最近は同じ富山県出身で、バスケットボールの八村塁が、ウィザーズから日本人初のNBAドラフト指名を受けた話題一色。新三役には届かなかったが、初金星で再び存在感を示すつもりだ。

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地元富山県民の興味が、移り始めていることは感じ取っていた。会見に臨んだ朝乃山が、報道陣の質問で「八村」の名前を聞いた直後。間髪入れずに「八村選手が出てきたことで、僕の優勝はもう消された」と、師匠の高砂親方(元大関朝潮)譲りのリップサービスで笑いを誘った。

だが、すぐに本音が漏れた。「(八村は)年下なので負けたくないという気持ちが出てきた」。富山市で行った優勝パレードで約2万5000人を集めた意地を見せた。

八村の存在は、最近まで知らなかったという。それでも「(地元紙から)号外が出るぐらいなので。すごい」と、郷土の英雄の座を争う存在だと察知。対面したいか問われると「並んだら僕が小さく見える」と再び笑わせつつ、八村より16センチ低い187センチだが、愛称が「富山の人間山脈」だけにプライドをのぞかせた。

2場所連続優勝については「考えていない」というが、先場所に続く存在感を見せるつもりだ。先場所は12勝したが西前頭8枚目。より上位で10勝の阿炎、竜電が新小結となったが「三役に届かなかったのは残念だけど、急に上がるよりは地道に」と焦りはない。

むしろ今場所は初の横綱戦が確実で、平幕にしかチャンスがない金星に色気も見せる。特に巡業で1度だけ稽古をつけてもらった白鵬戦は「がっぷりになる前に勝負をつけたい。横綱を引かせる相撲を取りたい」と意欲的だ。白鵬、鶴竜の両横綱のもとへの出稽古も視野に入れ「世代交代の仲間に入っていきたい」と力説。刺激を受けた八村と同様、新時代を切り開く決意を表明した。【高田文太】