BLコミックをこよなく愛する「腐女子」。そのオタク的日常を知っているわけではないが、杉咲花の好演はさもありなんと思わせる。
「ミーツ・ザ・ワールド」(10月24日公開)は、会社勤めに生きづらさを感じる女性の心温まる出会いを描き、現代の断片を映している。
原作は「蛇にピアス」の金原ひとみ氏。読者が自分を投影しやすい気弱な主人公を立て、ならではの異世界にいざなってくれる。
焼き肉の具材を擬人化したコミック「ミート・イズ・マイン」の推しキャラに全力で愛を注ぐ由嘉里(杉咲)は、職場の銀行では腐女子であることをひた隠しにしている。
将来に不安を感じるようになった彼女は、婚活を始めるが、合コンでは惨敗し、道端で酔いつぶれてしまう。救いの手を差し伸べたのがキャバ嬢のライ(南琴奈)だった。彼女のマンションに転がり込んだ由嘉里は、ライの友人で妙に淡泊なNo.1ホスト、アサヒ(板垣李光人)や、どんな人間でも受け入れるバーのマスター、オシン(渋川清彦)らと出会う。
由嘉里の目に映る歌舞伎町の人々はまぶしく、周囲の目が気になって口にするのもはばかられた腐女子トークにも興味津々に耳を傾けてくれる。居場所を見つけ生気を取り戻した由嘉里は、ライが平然と話す「希死(自殺)念慮」が気になって仕方がない。アサヒの協力を得てある行動に出るのだが…。
「私たちのハァハァ」や「アイスと雨音」などで、青春のきらめきを描いてきた松居大悟監督は、ちょっと遅めの由嘉里のときめきを巧みににじませる。推しキャラへの目の輝き、どこから出てきたのかわからないような嬌声(きょうせい)…杉咲が監督の意図にしっかりと応えている。
対照的なライの虚無的なキャラを、南が実に自然に演じている。近作ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」(フジテレビ系)の副生徒会長役の、ハラハラさせる感じも記憶に新しいが、今後が楽しみな19歳だ。
蒼井優がオシンのバーの常連で、人の死ばかりを書き続ける毒舌作家に。筒井真理子が由嘉里に寄り添おうとしてうまくいかない優しい母親を演じ、作品のアクセントになっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




