昨年の「WEAPONS/ウェポンズ」で一躍現代ホラーの旗手と称されるようになったザック・クレッガー監督は、もともとコメディー集団で喝采を浴びてきた人だ。巧みな仕掛けの端々に笑いのタネが仕込まれている。そんな監督が大ファンだというゲームの30周年に撮ったのが「バイオハザード」(10月9日公開)だ。
ミラ・ジョボビッチふんするヒロイン、アリスが悪の企業アンブレラ社に戦いを挑んだこれまでの映画シリーズとは趣を異にし、主人公は平凡な青年だ。
医療品の配達を生業にするブライアンは、大雪の夜に「緊急の品」をラクーンシティ総合病院に届ける仕事を請け負う。
雪道で不安定なハンドルを握る彼は突然飛び出して来た女性をはねてしまう。動けないほどの重傷を負ったはずの女性は林の中に歩いていく。足跡を頼りにようやく捜しだした女性を行き合ったパトカーに引き渡すが、街に向かって先行していたパトカーが突然横転。警官は即死し、重傷だったはずの女性は駆け寄ったブライアンに襲いかかり…。
序盤で、主人公は法を順守する真面目な青年であり、平均的なアメリカ人として銃器の基本的な操作に通じていることがわかる。観る側が認識している「ゾンビの生態」をまだ現実としては受け入れていないことも。だから、女性の不自然な行動と彼の常識的な対応が何ともおかしい。ハラハラしながら笑わされる。
いきなりゲームの世界に放り込まれてしまった平凡な青年の七転八倒をのぞき見る、という観客のスタンスに自然と導かれる。監督の言う「ゲームのどれか一作の端っこで起きていてもおかしくない物語」がしっくりくる。
舞台がその女性の家、ラクーンシティと移るに連れてカオスは膨らみ、「合体」を繰り返す怪物側のパワーもアップしていく。ブライアン目線のカメラワークで、いつの間にかこちらもゲーム世界に誘われる。
ブライアンは果たしてこの狂気の一夜を生き延びることができるのか。時系列を巧みに操ったこれまでの作品とは違い、彼が突き進む90分をリアルタイムに追う演出でサバイバルホラーの王道を行く。
ブライアン役は「WEAPONS-」にも出演したオースティン・エイブラムス。同じ衣装を50種類作り分けたという衣装デザイナーのきめ細かな仕事に後押しされ、90分間の疲労と心境変化のグラデーションを分かりやすく演じている。
ホラー嫌いもきっと楽しめる、ドキドキと笑いの末にスカッとする娯楽作品だ。【相原斎】




