痩せたいけど食べたい…を解決してくれる新しいダイエット「ロカボ」(注1)。ロカボ=ダイエットなら、痩せている人は関係ない? いえいえ、痩せている人にも、健康維持にもってこいの食事法なんです。データに基づいた科学的な健康法で、あらゆる都市伝説から解放されましょう。

カルビーの「フルグラ糖質25%オフ」に、グリコの「アーモンド効果200ml」をかけたロカボ朝食を食べる五戸(2017年6月)
カルビーの「フルグラ糖質25%オフ」に、グリコの「アーモンド効果200ml」をかけたロカボ朝食を食べる五戸(2017年6月)

ダイエット編15「糖質制限と病気予防の関係」

 【前回までのあらすじ】トーク編と並行して連載中のダイエット編。「ロカボ」に出会ってから、おなかいっぱい食べて、楽しくダイエットを継続中。第5回「食後の血糖値を上げないようにするのがダイエット」(4月27日更新)、第10回「人工甘味料より砂糖のほうが怖い」(6月5日更新)、第14回「ロカボ丸の内プロジェクト」(7月7日更新)でした。

体重も体型も改善する食事法「ロカボ」

 ゆるやかな糖質制限「ロカボ」はダイエットに最適。体重が減るだけでなく骨密度まで減少してしまうカロリー制限と違って、ロカボは太っている人は痩せ、痩せている人は筋肉量が増え適正体重になる食事法です。糖質だけ制限すれば、お肉もお魚もおなかいっぱい食べられるので、イライラせず続けられます。

すき家のロカボ商品「ロカボ牛ビビン麺」にサラダと味噌汁セット。おすすめです!
すき家のロカボ商品「ロカボ牛ビビン麺」にサラダと味噌汁セット。おすすめです!

 これまでダイエットにもってこいという話を多く書いてきましたが、ロカボは痩せたい方に限らず、健康を気にする方にもおすすめの食事法です。なんといっても、糖尿病予防になるからです。

糖尿病は他人事ではない

 糖尿病とは、血糖値の数値が異常に高い状態のままになってしまう病気です。日本人の6人に1人が糖尿病か糖尿病予備軍。40代以上に限ると3~4人に1人が糖尿病かその予備軍です。(「食・楽・健康協会」による資料「糖尿病と糖尿病予備軍の割合(2012年)」より)

五戸の空腹時血糖値。「92」。なお110mg/dLまでが正常値(2017年6月)
五戸の空腹時血糖値。「92」。なお110mg/dLまでが正常値(2017年6月)

 自分は健康診断で測った血糖値が正常値だったから問題ないと思っている方、あるいは自分は痩せているから大丈夫だと思っている方、他人事ではないんです。健康診断で測るのはご飯を食べていない時の血糖値。“空腹時血糖値”が正常でも、“食後血糖値”が異常な場合は多々あり、糖尿病の第1段階として知られています。また、痩せていても糖尿病にはなります。

「切断した足は生えてこない」

 糖尿病の恐ろしいのは、発症した時点では自覚症状がないことです。痛みもない、熱もない…それなのに、進行すると、失明や神経症を引き起こし、透析や下肢切断に至る場合もあります。また、がん・心臓病・脳卒中などの病気リスクが上がります。

 ロカボの発案者で北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生はよく「失った視力は戻らない、切断した足は生えてこない。糖尿病は自覚症状が出てからでは手遅れ。そうなる前に食い止めるのが重要」とおっしゃっています。

ロカボ食後の五戸の食後血糖値。「111」。140mg/dLまでが正常値
ロカボ食後の五戸の食後血糖値。「111」。140mg/dLまでが正常値

「ロカボ」で血糖改善

 摂取する糖質量をロカボの範囲内に抑えれば、血糖値の上昇・下降はゆるやかになり、糖尿病を予防することができます。カロリー制限よりも高い効果が確認されています。(2008年、医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』「糖尿病患者に限定した場合のヘモグロビンA1cの改善」より)

 また、第6回「カロリーとダイエット」(5月6日更新)にも記載した通り、カロリー増で血糖値が下がることもわかっています。

「ロカボ」で脂質改善

 また、ロカボは血糖値だけでなく、脂質異常の改善にも有効です。「低糖質食」と「低カロリー食」とを比較した試験で、善玉コレステロールと中性脂肪が「低糖質食」のほうが改善したというデータがあります。(2008年、医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』より)

 なお、ロカボで血圧値も改善します。この話はまた後日詳しく。

山田悟先生を取材。そのあと記念撮影
山田悟先生を取材。そのあと記念撮影

都市伝説に惑わされず「ロカボ」で健康に

 いかに糖質が人に与える影響が大きいか…。最近は糖質制限の本も増えていますが、反発するように「糖質は摂ったほうがいい」といった本も増えています。糖質摂取はゼロにしてはいけないので、そういう意味では摂ったほうがいいのですが、過剰摂取による高血糖が恐ろしいことは読者の皆さんにはわかると思いますし、データに基づいているのか、個人の感想なのか考えれば、どちらが役に立つのかは一目瞭然です。

 まとめると、ロカボの食事は、痩せられて、脂質も血圧も血糖も改善し、がんや心臓病や脳卒中などの病気予防にもなるということです。(次回ダイエット編は第16回「朝ごはんと血糖値の関係」の予定です)

本日のごのへの・ご・ろ・く

「ロカボ食 世界を救う 病気予防」

 (注1)「ロカボ」は、“ローカーボハイドレート”の略で、“ロー(低い)+カーボハイドレート(糖質)”のこと。1食の糖質摂取を20g~40g、一日70g~130gにする、ゆるやかな糖質制限。目安はコンビニのおにぎり1個で糖質40g。


 【参考図書】山田悟先生の著書『ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)。山田先生監修『世にも美味しい「ゆるやかな糖質制限ダイエット」』(世界文化社)。山田先生の新著書『90日で健康的にやせる! ゆるやかな糖質制限ダイアリー』(家の光協会)、『カロリー制限の大罪』(幻冬舎新書)。


 ◆山田悟(やまだ・さとる) 1970年、東京生まれ。1994年慶應義塾大学医学部卒業。2002年から北里大学北里研究所病院勤務。同病院医療連携室室長、糖尿病センター長、医学博士。一般社団法人「食・楽・健康協会」を設立、代表理事を務める。日本における糖質制限の第一人者。「ロカボ」の名付け親。「糖質制限の真実」(幻冬舎)をはじめたくさんの書籍を出版、メディアにも数多く登場。講演では糖質制限の大切さをわかりやすく話されます。