シネマ歌舞伎で18代目中村勘三郎と10代目坂東三津五郎が共演した舞踊「棒しばり」を見た。04年4月の歌舞伎座で上演された舞台をシネマ歌舞伎にしたもので、ともに48歳。三津五郎演じる太郎冠者が後ろ手をしばられ、勘三郎演じる次郎冠者は棒に手をくくりつけられ、手の動きを封じられた状態で、軽快に踊る。培ったテクニックはもちろん、小さいころからの親友である2人の息のあった踊りは、おおらかで、余裕があり、楽しいものだった。

 初演の太郎冠者は三津五郎の曽祖父の7代目三津五郎、次郎冠者は勘三郎の祖父の6代目尾上菊五郎。ともに舞踊の名手で、そのDNAを継承した2人による初めての「棒しばり」は28歳の時。以来、回数を重ね、2人が共演する人気演目になった。芸のライバルでもある2人は、負けじと張り合って踊っていたが、40代に入った98年の歌舞伎座で上演した時に、変化が訪れた。「100%の力で踊ればいい、というものではない。どちらかが主導権を持つというのではなく、どちらが欠けてもダメ。2人で一つのものを作ることの大切さ」に気が付いた。それからの「棒しばり」は「互いがいることの幸せを感じ、踊っていて楽しい」ものになった。しかし、運命は皮肉である。12年に勘三郎は57歳で、15年には三津五郎が59歳で亡くなった。

 今、2人と同い年で、女形の中村芝雀が「五代目中村雀右衛門」を襲名し、3月3日から歌舞伎座で襲名披露興行を行っている。若いころから活躍した2人に比べると、地味な存在だったが、人間国宝の中村吉右衛門との共演で着実に力をつけ、今や歌舞伎界をけん引する立女形となり、襲名でさらなる活躍が期待されている。もし、勘三郎、三津五郎が存命だったら、襲名に花を添えたことだろう。そして、かなわぬことだけれど、60代、70代の勘三郎、三津五郎も円熟した芸も見たかった。【林尚之】