ロンドンで観劇した「ハリー・ポッターと呪いの子」は、コベント・ガーデンに近いパレス劇場で上演中です。同劇場はかつてミュージカル「レ・ミゼラブル」が初演された名門劇場です。

 開演30分前に劇場に行ったのですが、入場する前に長い行列ができていました。荷物チェックと、金属探知機でボディチェックが行われたため、入るまでに時間がかかったのです。今のロンドンはテロの危険があり、ほかの劇場や博物館、美術館でも荷物チェックを受けましたが、ボディチェックまでされたのは、ここだけでした。人気公演とあって、テロの標的とされる可能性が高いということでしょうか。見た席は約100ポンド。日本円で1万5500円と、ストレートプレイとしては高いのですが、客席は子供から老人まで幅広い層で埋まり、期待感ゆえか、幕が上がる直前に拍手が起こるほどでした。

 肝心の舞台ですが、すばらしい出来でした。ホグワーツ魔法学校の黒マントへの鮮やかな早変わりや、服を着たままの状態で人が瞬時に入れ替わったり、本棚を通して人が入ったり出たりし、亡霊が劇場内を高速浮遊したりと、驚く仕掛けの連続でした。日本でスーパー歌舞伎などに携わる関係者と偶然にも同じ舞台を見たのですが、彼も「どういう仕掛けになっているのか分からない。これは日本でも使いたい」と言っていました。そして、映画でエマ・ワトソンが演じたハーマイオニーにアフリカ系の女優が起用されていたことにも驚きました。日本なら考えられないことですか、ロンドンでもブロードウェーでも、適役ならば、肌の色は関係ないのです。

 「ハリー・ポッター」の映画を見たことはあるものの、小説は読んだことはありませんでした。今回、ミュージカルと思い込んでいたのが、歌がないストレートプレイと聞いて、事前に原作を読みました。しかし、英語が苦手でも、舞台の展開はよく分かりました。エマ・ワトソンも観劇して、自らのSNSで絶賛のコメントをしたそうです。来年春にブロードウェーでの上演が決まっていますが、日本は未定です。日本でも「ハリー・ポッター」は人気ですから、いつか実現するものと期待しています。【林尚之】