今年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた「鬼滅の刃」ですが、その歌舞伎化をめぐって女性週刊誌などの報道がヒートアップしています。

人気アニメの歌舞伎化と言えば、市川猿之助のスーパー歌舞伎2「ワンピース」、坂東巳之助、中村隼人が主演した「ナルト」、尾上菊之助の「風の谷のナウシカ」などがあり、次は大ブームを巻き起こしている「鬼滅の刃」と思うのも当然でしょう。

実際、歌舞伎界にも「鬼滅」ファンは多く、市川海老蔵はブログやインスタグラムで「鬼滅」を何度か取り上げており、漫画が最終回を迎えた時もブログに書き込み、映画版も子供たちと一緒に見に行ったそうです。

京都・南座では、TVアニメ「鬼滅の刃」×「京都南座 歌舞伎ノ舘」展が開催され、竈門炭治郎らが歌舞伎衣装を身にまとった姿で、いち早く舞台上に登場しています。5日に行われたオープニングイベントに参加した尾上松也は「歌舞伎は家族愛、絆を描くことが多い。秘めた日本の心とかも類似している」。歌舞伎化についても「アニメと歌舞伎は相性がいい。中でも『鬼滅の刃』は歌舞伎として想像しやすい」と熱く話しました。

松也が言うように、「鬼滅」と歌舞伎との共通項はかなりあり、鬼そのものが登場する「茨木」「紅葉狩」などの演目もあります。さらに、平安時代の武将の源頼光とその家臣の四天王、渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武が蜘蛛(クモ)の精と対決する「土蜘」や、歌舞伎座で上演中の猿之助主演「蜘蛛の絲宿直噺」も頼光たちが蜘蛛の精と戦う話です。

すぐの歌舞伎化はないにしろ、数年後に歌舞伎版「鬼滅の刃」が実現するでしょう。ただ、アニメの歌舞伎化には時間がかかる上に、熱心なファンの期待にこたえるために、失敗は許されず、慎重に準備を重ねないといけない企画です。そして、実現すれば、誰が出演するかが注目となりますが、アニメの歌舞伎化の経験がある猿之助、菊之助よりももっと若い世代でしょう。20代の若手はもちろん、15歳の市川染五郎、16歳の市川団子も将来の候補になるかもしれません。

海老蔵も先日のイベントで、「鬼滅」の歌舞伎化の可能性について聞かれると、「我々の世代ではなく、例えば、せがれ(堀越勸玄)や娘(市川ぼたん)の世代で、歌舞伎の視野を広げるような話があればいいかな」と、次世代に期待を寄せていました。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)