タイトルを聞くだけで、シンガー・ソングライター中島みゆきの代表曲が脳内で繰り返される状態になっている。歌の力をあらためて感じている。名曲をモチーフに、菅田将暉、小松菜奈のダブル主演で、出会いや別れを描いた。

これまでエキセントリックなキャラクターや天才肌といった役柄で際立ってきた菅田が、北海道で生きる青年を淡々と繊細に演じ、新しい一面を見せている。

手痛い裏切りに遭いながら仕事に打ち込む女性を演じた小松。30代を演じたのは初めてだそうだが、生来の意志の強そうな眼力が役に反映されている。シンガポールの屋台で1人、カツ丼を食べる姿にはくぎ付けになった。役柄への共感と応援とともに、スクリーンを独占できる女優としての力を感じた。

主人公2人にかかわる人物も魅力的だ。栄倉奈々が演じた菅田の妻が運命の糸を語る場面に引き込まれたし、斎藤工が演じた投資会社の社長も、平成という時代の危うい一部分を具現化していて興味深かった。

いろんな糸がいろんな色の布を織りなしていて、大きな広がりを持った作品だった。

【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)