主人公の写真家を演じる嵐の二宮和也がとてもいい。ひょうひょうとしているけど、人に対する強い好奇心を持つ主人公を自然体で体現している。脳腫瘍の幼い息子と両親の家族写真を撮るシーン。カメラのファインダーをのぞく両目に涙があふれる。豊かな感性で被写体の心情をくみ取り、シャッターを切ったときの本物の涙には心が震えた。

著名な写真家を多く輩出し、「写真界の芥川賞」と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞した三重県津市出身の写真家、浅田政志さんが家族を撮影したユニークな写真集「浅田家」などが原案。「湯を沸かすほどの熱い愛」で感涙を誘った中野量太監督が家族の絆や写真が持つ力を描く。

前半は、政志が29歳で受賞するまでを描く。両親役は風吹ジュンと平田満、兄は妻夫木聡。浅田家による消防士などコスプレ家族写真は4人が全力でなりきっている。1枚1枚がクスッと笑え、味わい深い。

後半は東日本大震災後が舞台。政志は家族を失った人々と出会う。スマホ画面で写真を見ることが一般的になりつつある中、写真をプリントし、形として残すかけがえのなさを教えてくれる。【松浦隆司】

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