第2次世界大戦中のフランス。スペインとの国境ピレネー山脈の麓にある小さな村「レスカン」で、村民が大芝居を打ち、ドイツ軍から12人のユダヤ人の子どもを救った奇跡を描く。原作は英国児童文学界を代表するマイケル・モーパーゴの小説だが、「子ども向け」ではなく、大人の心にも刺さる作品だ。

主人公の羊飼いの少年ジョーはある日、山の中でユダヤ人・ベンジャミンと出会う。ナチスから逃れてきた子どもたちをスペインに逃がそうとしていたが、村にドイツ軍が進駐する。「見つかるかも…」。物語の終盤は緊張の連続で、何度も息を潜めた。

主役のジョーを演じるのはネットフリックスのドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で大ブレークしたノア・シュナップ。気弱な少年が恐怖に立ち向かい、成長していく姿を見事に演じている。祖父役はフランスの名優、ジャン・レノ。いぶし銀の演技で静かな闘志を表現している。あらがえない戦争という状況下でも、尊厳を手放すことなく生きようとする人々の姿に胸を打たれた。クライマックスは決してハッピーエンドではないが、希望は残された。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)