吉永小百合を初めて取材したのは「海峡」(82年)の青森県竜飛崎ロケだった。強がりの木村大作カメラマンがダウンコートを2枚重ね着する厳寒の中、笑顔で臨む36歳の吉永を、記事には「掛け値なしに10歳若い」と書いた。

過酷なロケを思い出したのは、今作の初の登山家役からの連想に違いないが、女優として得することばかりではなかったろう当時からの「若見え」も、モデルとなった田部井淳子さんのイメージにハマっている。

女性として初めてエベレスト登頂に成功した田部井さんは、その脚光ゆえに周囲や長男とのぎくしゃくした関係に悩む。それでも、登山家としての意志を貫き、晩年は東北の被災高校生を招く富士山登山に注力した。阪本順治監督は70年代からの時代背景をていねいに描き、その半生を追う。特に印象的な晩年の若々しさが吉永を通して自然に伝わってくる。

温かく支える夫役に佐藤浩市。「お父さん」「お母さん」と呼び合うオシドリ姿が15歳差を超えて若見え効果を実感させる。もう1人の支えとなる新聞記者役の天海祐希は「最高の人生の見つけ方」(19年)に続いてすっかり名コンビだ。【相原斎】

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