タイトル、ビジュアルを見て、時代劇だから…と心のハードルを上げてしまった人にこそ見て欲しい、アクション、サスペンス、エンターテインメント、人情…さまざまな要素が詰まった、痛快な1本だ。

江戸・木挽町の森田座で、大入り満員で千穐楽を迎えた「仮名手本忠臣蔵」の舞台がはねた直後、近くであだ討ちが起きる。美濃遠山藩士の伊納菊之助が、父清左衛門を殺害、逃亡した作兵衛の首を討ちとった。雪の舞う夜、若く美しい菊之助が成し遂げた「木挽町のあだ討ち」は、江戸の語り草となる。1年半後、菊之助の縁者を名乗る加瀬総一郎が、ふに落ちない点があり解明したいと森田座を訪れ、聞き取りを始める。その中で、菊之助が森田座の厄介になりながら、あだ討ちの機会をうかがっていたことを知る。そして、森田座を取り仕切る戯作(げさく)者の篠田金治が上方への出張から帰還し、驚くべき真相が明かされる。

菊之助のあだ討ちのシーンを演じる長尾謙杜が、とにかく美しい。作兵衛を演じる北村一輝も、受け止める懐の深い芝居を見せる。そして、1つ1つの謎を、丁寧な聞き取りで解き明かしていく総一郎を演じる柄本佑は、主演として作品のど真ん中にいながら、実に軽やかだ。目線を寄せた観客は、ともに謎解きをしているかのように引き込まれていくだろう。

そして、全ての事情を知る金治を演じた渡辺謙が、役と同じように全体を包み込まないと、この作品は成り立たないだろう。終盤に出てくる、体を張ったシーンは大きな見どころだ。【村上幸将】

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