買い物など消費をめぐって被害にあったとき、力になってくれるのが全国各地の自治体の消費生活センターですが、コロナ禍で消費生活センターに「高圧的な相談者」が増えています。 先日、大阪府の吉村洋文知事(45)、松井一郎市長(56)が来阪した井上信治消費者担当相(51)と大阪市内で地方消費者行政について意見交換しました。議題の1つとなったのがコロナ禍での特有の問題でした。「コロナ禍で不安やストレスがたまり、だれかを批判したい、だれかに文句を言いたい。社会全体がそういう空気になっている。批判や意見が先鋭化し、消費生活センターに高圧的な相談が非常に増えている」。吉村知事が懸念する背景を探りました。

大阪府消費生活センターによると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で相談件数が急増しています。府内では多いときには1日60件近くの相談があります。相談を受け、消費者と業者の間に入り、解決につなげてくれるのが消費生活相談員ですが、同センターの広報担当者によると「対応が困難な相談が増えています」。

旅行、結婚式などキャンセル料をめぐる相談が「苦情」になることが多いといいます。例えば、結婚式は費用も大きく、キャンセル料も高くなります。「なんとかしてほしい」との相談を受け、相談員が事業者との解決をサポートしますが、「相談される方の思うように解決できない事例もある。その場合、大声で相談員に対して威圧したり、罵声を浴びせたり、高圧的な態度になることが多々あります」と担当者。

相談員は消費者に寄り添いながら事実関係を確認し、公正な立場で事業者と折衝します。ただコロナ禍では、契約書の内容などで、消費者が損をすることが多くなります。相談者にとって納得のいく解決ではないときには「消費生活センターは消費者の味方になってくれないのか!」と厳しい言葉を浴びせられることも。

これまでも相談員に対して罵声を浴びせる相談者もいましたが、担当者は「コロナ禍で、通常なら暴言を吐かれないだろう普通の方が『だれにも助けてもらえない』という不満もぶつけることができず、消費生活センターの場に『不満』が持ち込まれています」と話します。消費生活相談員はメンタル的にも厳しい状況に追い込まれているといいます。

吉村知事は「相談員のみなさんは非常に厳しい状況で相談を受けている。毅然(きぜん)と対応するルールが必要。相談員のみなさんが適切な相談を受けることができるようにしていきたい」と強調しました。消費者が困ったことを相談するはずの窓口に「困難」なクレームが増えています。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)