ABCラジオの特番「キダ・メロディーは、永遠に!」が8月3日に放送された。今年5月14日に亡くなった作曲家キダ・タローさんをしのび、関係者のコメントや代表的な楽曲が紹介された。

司会を務めたのは、番組共演を通じてキダさんと親交のあった芦沢誠アナウンサーと、タレント土谷多恵子。友人知人としてコメントを寄せたのは浜村淳、円広志、河島あみる、小川恵理子ら。

なかでも上沼恵美子の話は印象に残った。

要約すれば「キダ先生の姿を見かけるだけで安心できた。包み込んでくれるやさしさがあった」「いつまでも亡くなることのない人だと思っていた。人生の先生、恩師でした」というもの。芸能界での先輩・後輩の関係を超えて、キダさんが別格の存在であったことをうかがえる。

キダさんが司会を務める「ミキサー完備 スタジオ貸します」(ABCヤングリクエスト内の人気コーナー)に大学生時代、アマチュア歌手として出演したのが司会の土谷。「あれ以来、50年もお世話になりました。亡くなるとは思わなかった。ずっと生き続ける人だと信じていた」と、今なお他界した現実が受け入れられない様子だった。

歯に衣(きぬ)着せぬ物言いが人気だった。アマチュア時代の円広志には「リズムが悪い」とズバリ。中村鋭一さん(ABCアナウンサー→参院議員→タレント)が、キダさんらのゴルフ仲間に参加したいと言ってきた際は「あの男のゴルフは品がない」とバッサリ。

それでも世代を超え、誰からも愛されたのは、キダさんの人柄があってこそ。芦沢アナの番組でアシスタントを務めたタレント小川恵理子は、キダさんにツッコむたび「じゃかあしい!」と何度も叱られた。もちろん本気で怒っているのではない。「いつもニコニコしてて、笑顔のかわいい人。決して偉ぶることなく、愛されキャラでした」と小川は振り返る。

番組でのエピソードを聴くうちに、記者はその昔、キダさんに会って話を聞いたことを思い出した。ABCラジオの人気番組だった「フレッシュ9時半!キダ・タローです」(1973~89年放送)が放送終了するという情報をたまたまキャッチし、取材を進めるうちに本人と直接会うことになったのだ。

キダさんと向かい合ったのは、ホテルプラザ(ABCの旧社屋の前にあった)の喫茶室。いま思えば、自分の番組が終わってしまうというネガティブな話を若造の新聞記者にするのだから、胸中は穏やかでなかったはず。それでも、あくまでソフトに、誠実に「番組終了」の話をしてくれた。

話を聞き終えて、最後に「写真を撮らせてください」と頼むと「こんな格好でええんですか?」と少し戸惑った顔を見せた。特にラフな衣装だったわけではなく、きちんとジャケットを着ておられたのだが、申し訳なさそうに記者のカメラの方を向いてくれた。

終始、紳士的な態度を崩さなかった。

それから約20年が経過して、キダさんの半生を振り返る企画の取材があった。奥さまといっしょにインタビューを受けていただいた際も、笑顔で数々のエピソードを明かしてくれた。そのときの表情は、今もはっきり覚えている。

そう、キダさんは今も、私たちの心の中で生きている。「なにわのモーツァルト」として残した作品はこの先もずっと輝きを放ち、キダさんの笑顔はいつまでも色あせない。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミへキタへ~」)

キダ・タロー氏と美千代夫人(09年1月)
キダ・タロー氏と美千代夫人(09年1月)