衆院選が終わって1週間。自民党の圧勝という結果以上に、あらためて強く思うのは「選挙妨害、このままでいいのか?」という一点だ。
ここ数年、街頭での演説が始まると、候補者に罵声を浴びせたり、つかみかからんばかりに近寄って威嚇する。そんな行為が目に余る。
日本保守党は公式X(旧ツイッター)で大阪での街頭演説後、有権者らと握手をしていた最中に女性が乱入。スタッフ2人が殴られるという事件が起こったことを伝えた(2月4日)。目撃者は「殴る蹴るの暴行だった」と証言した。
また同じ大阪では、自民党候補者への組織的ないやがらせが繰り返し行われた。拡声器や横断幕を使って「○○(候補者の名前)を許すな」「裏金ヘイト議員はいらない」などと主張していた。
さらに大阪府知事選、大阪市長選に踏み切った維新の吉村洋文氏に対し、街頭で罵声を浴びせる集団の模様がテレビで紹介された。番組では「ヤジは憲法21条(表現の自由)で保障されている」「演説が聞き取れないのは選挙の自由妨害罪にあたる」という、どっちつかずの解説だった。
現実は、もはや「ヤジ」というような生やさしい表現では収まらない。互いの主張、公約をぶつけあうのが選挙ではあるが、行き過ぎた対立陣営への攻撃はフェアプレーではない。プロレスなら凶器攻撃で反則負けになるレベルだ。
で、決まって上がるのが「警察は、なんで取り締まらないのだ!」「明らかな選挙違反だろ」という声だ。
混乱に備えて警戒にあたっている警官はいる。いない場合でも110番すれば駆けつけてくれる。ただ、実力行使には出ない。いや、出られない。
何故なのか? こうした異常事態の背景には、司法の判断が関係しているようだ。
2019年7月、札幌市内で参院選応援のため演説していた安倍晋三首相(当時)に大声でヤジを飛ばした2人が、警官によってその場から移動させられた。要するに「迷惑だから、どきなさい」ということだ。
だが、その2人は「表現の自由を害された」と主張し、裁判を起こした。22年3月に出た判決は「表現の自由が侵害された」として、北海道に88万円の支払いを命じた。
この判決以来、ヤジを飛ばしたり、妨害に近いいやがらせがエスカレートした。当事者は「ヤジを飛ばすのは自由だ」「これは裁判所が認めた行為だ」と言いたいのだろう。
警察が手を出さず、テレビのニュースもこうした混乱の現場を積極的には伝えない。
話は変わるが、劇場で芝居やライブを見る際、マジで困るのが公演中の客のおしゃべりだ。悪意はないのかもしれないが、近くでベチャクチャしゃべられては舞台のセリフが聞こえない。せっかく料金を払って楽しみに見に来たのに、腹が立ってしかたない。
選挙演説も同じ。大声を出して演説の邪魔をするのは、その本人は気持ちいいかもしれないが、演説を聞きたい人にとっては迷惑このうえない。「聞く権利」をぶちこわしているのではないか。
札幌地裁の判決は、今のカオスを想像できなかったのか。このままでは選挙が選挙でなくなってしまう。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミへキタへ~」)




