関西各地で撮影が進む映画「国境」の異例の「撮影中会見」がこのほど、大阪・あべのハルカスで開かれました。ダブル主演の伊藤英明、染谷将太、井筒和幸監督らが登壇しました。国境の企画を立ち上げたK2ピクチャーズの紀伊宗之社長は「奥歯に物をはさんで生きるのはつまらない。やりたいことやればいい」と覚悟を語りました。
「国境」の原作は黒川博行氏の同名小説(疫病神シリーズ)。大阪のヤクザ・桑原保彦(伊藤)と建設コンサルタント・二宮啓之(染谷)の“疫病神コンビ”が、だまされた金を奪い返すため詐欺師を追って北朝鮮に潜入するという、大手映画会社では扱いにくい題材に踏み込む挑戦的な企画です。紀伊氏の「奥歯-」という言葉は、題材選びから売り出し方まで、忖度(そんたく)せず真正面から打ち出す姿勢を象徴しています。
紀伊氏は東映の興行子会社で映画館の運営に携わるなどの経験を経て、プロデューサーとして「犬鳴村」「孤狼の血」など多くのヒット作を生み出してきました。国内市場だけを見た内向き志向や、クリエーターへの利益還元が少ない従来の仕組みでは日本の映画に将来がないと考え、世界を見据えた新しい資金調達と製作の仕組みをつくるため、23年にK2ピクチャーズを設立しました。
その手段として、作品ごとに企業が集まる「製作委員会方式」ではなく、ファンドで資金と権利管理をまとめて意思決定を速くし、挑戦的な作品を製作し、成功の利益をクリエーターにも還元することを狙っています。
会見に出席した原作者の黒川博行氏も当初は映画化について「まさか実現するとは…」と率直な驚きを語り、スケールの大きさや予算面のハードルから「絶対に無理だと思っていた」と振り返りました。それでも企画が動き出し、関西各地で大規模ロケが進む現在の状況を前に「楽しみで仕方がない」と紀伊氏と井筒監督への感謝を口にしました。
現場では井筒監督が「みんなで直し合わせをやる」と、丁寧に演技の精度を上げながら撮影を進めているといいます。伊藤は井筒組の現場を「楽しくて仕方ない」と表現し、監督の熱量と演技指導によって毎日新たな発見があると強調。染谷も「映画を作るってこんなに楽しいことなんだ」と、かみしめるように語りました。
8年ぶりの新作となる井筒監督は「くしくも世界の親分たちが、自分の我欲でシマの取り合いをやっとる最中。うちらの映画もこの2人がそんなことを揶揄(やゆ)するくだりがあります。今の時代だなと思って作っています」と語り、「娯楽映画を作りたかったからね。辛気くさい映画ばかりだから。ダメだよ。そう思わないか?」と痛快な啖呵(たんか)を切りました。
紀伊氏は「年末か年明けには公開できそう」と胸を張りました。「国境」はタブーなしで突き進みそうです。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




