ダンスに生かされ、ダンスに生きている。振付師のakane(34)。大阪・登美丘高ダンス部コーチ時代に創り上げた「バブリーダンス」は社会現象となり、プロデュースを手がけるダンスグループ「アバンギャルディ」は世界を驚かせている。20日には、初の著書「謎のおかっぱ集団 気づいたら世界で踊ってた akaneとアバンギャルディの物語」(KADOKAWA)を発売。ブレない信念とともに、人々を魅了し続けている。【大友陽平】

- 本を出版する、元大阪府立登美丘高ダンス部コーチでバブリーダンスの生みの親、「アバンギャルディ」プロデューサーで振付師のakaneさん。終始明るい笑顔で撮影を盛り上げ、こちらまで自然と笑顔になるような時間を与えてくれました(撮影・小島史椰)
★「見たこともないものを見たい」
見る者を一瞬でとりこにするパフォーマンス、斬新なアイデア-。一糸乱れぬ動きを創り上げるべく、時に見せる厳しい一面も、ダンスで人を喜ばせたいという思い一心だ。今回初めて著書を発売するにあたりこれまでの人生を振り返ると、頭に浮かぶのは、全てダンスのことだった。
「いろいろな人と出会えて、仲間ができて、目標ができて…。自分を語る上では、ダンスがなくなったら何もないって思えるぐらい、ダンス一色の人生やな! って」
母に勧められ、3歳のころから地元岸和田のダンススクールに通った。その後、電子オルガン、そろばん、書道、バスケットボールとさまざまな習い事もしたが、ダンスにのめり込んだ。運命の出会いがあった。
「ダンススタジオの先生が本当に素晴らしくて…。愛情たっぷりで、ダンスの楽しさを教えてくれる先生だったので、一気にハマりました。先生の好きな曲で、好きな衣装で振り付けする感じで、その姿がすごくかっこいいし、私もやってみたいって憧れました」
四六時中踊っていたが、人に教えたり、振りを作る気質もこの頃から備えていた。
「小学生の時はパラパラがはやっていて、休み時間にみんなに教えてあげたり。周りからは表現が大げさってよく言われるんですけど、学校の先生から『akaneちゃんは、褒めたりする声が大きくて、その子も喜んでるよ』って言われたこともありました」
中学では、友人と同好会を部に“昇格”させ、登美丘高でもダンス部で活動。大学時代に、母校のダンス部をコーチとして手伝うことになった。初めて自らが踊らない立場を経験。客席から見た光景が、今の活動の源になっている。
「客席にいるとみんなの動き、お客さんの反応が分かるんですよね。手が上がる感じとか、だんだん腰やお尻が浮く瞬間とか。コーチとしてみんなの目標をかなえていきたいというのもありましたけど、裏方としてやる快感みたいなものを得られました」
17年、荻野目洋子のヒット曲「ダンシング・ヒーロー」に合わせ、ダンス部のメンバーがボディコン、肩パッド入りの派手なスーツに、ソバージュ姿で踊る「バブリーダンス」が、YouTubeでの再生回数1億回を超えるなど、国内外でバズった。
「見たことないものを見たいという感覚があるので、バブリーダンスを作った時も楽しくて仕方なかったです。その時はダンス初心者の子たちが多くて、インパクトをどうやって残したらいいんだろうと思った時に、あえて踊りにくいような見た目でやるのはありかも! って。全員衣装も違うけど、統一された動きをしたらもっと濃くなるというか。全国大会で優勝はできなかったんですけど、見せたい形はあるからもったいないと思って、自分で撮影と編集もして配信したんですけど、それが考えられへんぐらい、一気に広まっていって。本当にいい経験をさせてもらいました」
ダンス部のコーチを退いた後も、振付師、プロデューサーと活動の幅は広がっているが、信念は一貫している。
「人前に出してもいいものかどうかというのはまず第一に考えるわけで、しっかりと準備するということは、今も大事にしているところです。そして『自分が今見たいなって思うもの、こんなの作ってみたい』という直感はすごく大事にしています。akaneさんらしくと依頼していただく場合も、自分がクリエートする場合も、なんかワクワクするとか、これをやって楽しいか? と自分の中でやりたい方向が感覚的に決まっていて、それに向けてやったら、お客さんにも伝わって、楽しんでもらえると思っています」
思いを乗せたダンスは、海外にも広がりを見せている。おかっぱ頭に制服姿で踊り、CM、イベントなどさまざまなシーンで活躍するアバンギャルディは、23年に、米人気オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」で、日本勢としては10年ぶりに決勝進出を果たした。
「これまで真剣にやってきた、ダンスをそろえる動きがすごく不気味に思われて(笑い)。ダンスの技術だけじゃなく、髪の毛の動き、スカートの広がり方、目線の角度…ずっとこだわってきたことが通用したというか、認めてくれたのはうれしかったです」
25年の「大阪・関西万博」では誘致活動から携わり、公式ダンス「ミャクミャクぽん!」の振り付けや、開会式のパレード「Parade of Global Harmony」の振り付け・演出を手がけた。
「岡本太郎さんがめっちゃ好きで、大学生の時には70年の万博をテーマにした(ダンスの)作品をつくったこともあったんです。そんな万博に自分も参加できて、一つ夢をかなえられた瞬間でした」
ダンスを通じて人々に喜び、楽しさを提供し、人脈が広がり、世界につながる。これからも発信を続けて、ダンスにあふれた人生をさらに充実させていく。
「みんなからもらってるパワーとかいろいろな支えを、自分のフィルターを通してもっと伝えていける存在になりたいです。仕事も家庭も、しんどい時もあると思うんですけど、それを忘れられたり、もっとハッピーな気持ちにできるのがエンターテインメントだと思っています。明日頑張ろうって思える作品を、これからも作っていけたらと思います」
もっとも自身の息抜きは「断然ビールです!」。底抜けの明るさとダンスで、ニッポンを、世界を晴れやかにしていく。
▼親交が深い歌手高橋洋子(59)
才能やセンスだけでは、人の心は動きません。akaneさんが多くの人をひきつける理由は、作品にも人にも一切妥協しない姿勢にあるのでしょう。その根底には、いつも深い愛があります。仲間、作品、クライアント、お客さまへの愛。その積み重ねが唯一無二のステージを生み出します。学生時代から彼女を知るスタッフの方に「当時から、ここまで活躍されると思っていましたか」と尋ねると「はい。絶対に有名になると思っていました」と即答されました。彼女の才能への評価だけでなく、人としての在り方への信頼なのでしょう。彼女はこれからも“愛の旋風”として世界を駆け巡り、多くの人を笑顔にするでしょう。近づけば巻き込まれる。でも、その風はどこまでも温かいのです。
◆akane(アカネ)
1992年(平4)8月13日、大阪府生まれ。大学時代から母校の大阪・登美丘高ダンス部の指導にあたり、全国優勝に導く。15年、ダンスカンパニー「アカネキカク」設立。22年結成のアバンギャルディのプロデューサーを務めるほか、EBiDAN「Yes! 東京」などの楽曲の振り付けをはじめ、テレビの企画、CMの振り付けも多数。アンパンマンこどもミュージアム内のショーやサンリオピューロランドのショー振り付けなども担当。






