濃姫代役に女優川口春奈(24)の起用が決まったNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放送スタートが、当初から2週間延期の来年1月19日に決まり、同局から発表された。

前回の当コラムで書いた通り、「気高さと強さ」(NHK)という濃姫をしっかり表現してくれそうな川口さんの起用は、勢いのあるいいキャスティングだと感じている。送り手が納得する大河をしっかり楽しみたいので、個人的には2週延期も全然OK。出演者、制作の重圧は計り知れないが、久々の戦国大河を生き生きと描いてほしいと願うばかりである。

というわけで、戦国ファンとしては待ち遠しい時間がちょっと延びたので、ホットな「濃姫」について、過去印象に残るマイベストを振り返ってみた。

◆柴咲コウ/フジテレビ月9ドラマ「信長協奏曲」(14年)

タイムスリップものだが、平成の理屈で壁を突破していく信長(小栗旬)と、戦国しか知らない濃姫の強さがいいラブストーリーになっていて、自らを「わらわ」、信長を「うつけ」と呼んで支える濃姫像が生き生き。ヒロインとあって心の動きが丁寧に描かれたのも特徴的。初めてのデートに心躍らせるツンデレや、別れの夜に「しかと戦ってまいれ」と決して泣かない名場面なども印象に残る。美しさ、チャーミングな言動、斎藤道三の娘らしい肝の据わり方。濃姫のパブリックイメージを月9がドラマチックに見せてくれた。

◆中谷美紀/TBSスペシャルドラマ「織田信長 天下をとったバカ」(98年)

木村拓哉の初時代劇。とにかく彼女の濃姫は美しかった印象。夫が何を考えているのか万事心得ているクレバーな雰囲気が、ギラギラした信長と相性が良かった。「留守を頼んだぞ」「はい」みたいな簡単なやりとりだけでもかっこいい。父斎藤道三から「信長がただのうつけならこれで寝首をかけ」と渡された短刀を信長に託す有名な見せ場は、この人がいちばん似合っていたと思う。弟、信行を手にかけた信長の返り血を黙ってふいてやる場面が記憶に残る。

◆和久井映見/NHK大河ドラマ「功名が辻」(06年)

本能寺で夫、信長(舘ひろし)と戦い、鉄砲で蜂の巣という斬新な最期を描いて話題に。寝所で信長と「明智謀反」の報を聞き、赤い打ち掛け姿で「あの世で合おうと仰せになれども、殿は地獄、私は極楽。これでは死に別れにございます」は名場面だった。瀕死(ひんし)の信長を奥に隠すまでの時間稼ぎで応戦し、やり遂げた。史料に乏しい濃姫だから描けた自由な描写で、短刀を首にあてた信長の壮絶な自害シーンとセットで記憶に残る。

◆斉藤由貴/テレビ朝日「信長のシェフ2」(14年)

平成からタイムスリップし、織田信長の料理番となった若者、ケン(玉森裕太)の戦国サバイバル。信長(及川光博)のため、どっしりと裏で暗躍する毒婦系濃姫の味わい。ケンをスパイだと疑って縛り上げがちだが、殿のために使える男だとも分かっている合理的な魅力も良かった。ドリアやスイーツなど、戦国にはない料理を口にして「なんとまろやかな舌触り」とか、グルメリポート的なせりふも多数。それでもキャラが破綻しない存在感は強烈だった。

◆松坂慶子/NHK大河ドラマ「国盗り物語」(73年)

大河の中でもずばぬけてファンの多い作品。リアルタイムで見ていないのでオンデマンドで総集編を見たが、凜(りん)として美しい濃姫のイメージはこの松坂慶子版がベースになっているのだと実感。道三(平幹二朗)から託された守り刀を「父上を指す刀になるやもしれませぬ」のくだりや、本能寺を襲われる直前のひざ枕など、後の定番シーンがたくさん。本能寺は、信長(高橋英樹)とともに戦うパターン。長刀を手に「殿、お濃は戦いますぞ」「勝手に死ね」「はい」のやりとりはちょっと別格だった。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)