1月期の冬ドラマは、主要枠に6本の医療ドラマがかぶる事態となっている。病院という人間交差点で1話完結のストーリーを組み立てやすく、外ロケ不要で手間と予算を抑えられ、手堅く視聴率が取れる。制作現場、営業現場にとって、切り札のジャンルになっている。
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民放関係者は「1話完結で痛快と感動を描きやすい医療ドラマは、大コケするリスクが少ない手堅いジャンル」と話す。
平均視聴率14・8%でフジ「月9」復活の転機となった「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命3」(17年)や、TBS「コウノドリ」(15年、17年)など、枠が細り落ち始めると医療モノを編成して2ケタに復帰、という例は多い。月9が昨年「トレース」「ラジエーションハウス」「監察医 朝顔」と“白衣系”を3連発で編成し、5作連続2ケタを実現させたのは象徴的だ。
あらゆる年齢、性別、職業、経済レベルの人が患者としてやってくる病院は、人間交差点として1話完結のストーリーを組み立てやすい。基本的に病院内で話が進むため、外ロケが極端に少なく、予算とロケ手配の手間を抑えられるのもこのジャンルならではだ。大コケするリスクが低く、スポンサーやタレントの説得もしやすい。「医療監修に協力的なお医者さんがここ数年で増えた」ことも大きな要素という。
昨年4月期も日テレ「白衣の戦士!」、TBS「インハンド」、フジ「ラジエーションハウス」の3局で医療モノがかぶって話題になった。振り返れば、警察・探偵の捜査モノが7本もかぶった14年1月期のような例もある。それぞれの局が2、3年かけた企画がなぜ一気にかぶるのかは、民放関係者も「こちらが知りたい」という謎だ。宣伝部員も「焦点が散らばってPRしにくい」のが本音だったりする。
中堅テレビマンは「『半沢直樹』が大ヒットした後は金融モノが多く制作されたし、『ドクターX』がヒットすれば医療モノに目がいく。ビッグドラマが出ると企画会議で『ああいうものを』となりがちで、同じジャンルが続くことになる。ひと昔前は警察で、今は医療」。
また、各局が制作情報を厳重に管理していることが、逆にかぶりを生むことにもつながっているようだ。「どこかが『来年はこれをやる』と明かせば他局がずらすのでかぶらずに済む。各局ひた隠しなほど『せーの』で同じカードになりやすいという皮肉」と話している。
1月期の主要枠の医療ドラマは次の通り。
◆日本テレビ「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」(11日スタート、土曜10時/天海祐希、椎名桔平)
◆TBS「恋はつづくよどこまでも」(14日スタート、火曜10時/上白石萌音、佐藤健)
◆TBS「病室で念仏を唱えないでください」(17日スタート、金曜10時/伊藤英明、ムロツヨシ)
◆テレビ東京「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」(20日スタート、月曜10時/小泉孝太郎、高嶋政伸)
◆フジテレビ「アライブ がん専門医のカルテ」(9日スタート、木曜10時/松下奈緒、木村佳乃)
◆NHK「心の傷を癒すということ」(18日スタート、土曜9時/柄本佑、尾野真千子)
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)