大みそかのNHK紅白歌合戦のリハーサル取材が29日から行われている。例年、多くの媒体でごった返すNHKホールの取材風景も、コロナ禍の今年は代表質問を別室でリモート取材、というスタイルに様変わりした。取材する側もされる側も「さみしい」の声が聞かれるが、イレギュラーな場だからこそタレントのスキルの差が浮き彫りになったりして、それはそれで発見があった。

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今年のリハ取材は新聞媒体のみで超こぢんまりと行われた。音合わせリハを終えたアーティストが順次抱負を述べに来る囲み取材は、今年はスポーツ紙6紙から代表質問者1人のみが行い、その映像、音声を局内の別室でリモート取材するという形で行われた。アーティストを迎えるカメラの放列もなく、NHKのオフィシャル、一般紙代表撮影、スポーツ紙代表撮影の3台のみとなった。

NHKと各社の調整の結果、リモート用の別室に入れるのも各社1人に限定。密にならないよう、巨大な会議室にNHKの技術力を集約したようなモニターシステムが用意されていてさすがと感じたが、そこから先は各社それぞれ。各社のやり方で映像や音声などを飛ばし、クラブ内の記者間で共有して分担するパターンが多かった。

やってみると、グループの場合「誰が話しているのか分からない」という事態に。紅白のような大型取材は担当記者ばかりではないので、ランダムに選ばれたメンバーの顔と名前が分からないケースも多く、音声だけ聞いているチームは絶望的。それだけに、リモートの取材状況をきちんとイメージして話せるアーティストの存在はありがたかった。

Hey!Say!JUMPの場合、NHK広報から、例年と違って代表質問であること、別室で記者たちがリモートしていることなどの基本情報を聞くと、マイクを持った山田涼介が「山田です。よろしくお願いします」と名乗ってから発言。こういう時には必ずフルネームを名乗る有岡大貴もいつも通り。その後再び山田が発言した際も「山田です」と名乗っていた。29日の3組目という早いリハ順。まだ「名乗ってから発言を」という通達がある前だっただけに、取材陣からも「さすが」との声が聞かれた。

Kis-My-Ft2も、最初にマイクを持った玉森裕太が「玉森です」。ほかのメンバーも同様。誰かの発言中に横からかぶせることもないので、リモートの取材者も聞き取りやすい。「皆さんご存じの」という前提で誰彼構わず話すグループも散見されただけに、こういう時に発揮されるタレントスキルはいろいろ新鮮だった。

女性グループでは、櫻坂46が名乗りまくり。「櫻坂46の森田ひかるです」など、登壇した5人が発言のたびにフルネームを名乗り、リモート勢から「分かりやすかった」の声。今年、欅坂46から改名し、再スタートを切ったばかり。「せっかくのチャンス。櫻坂46というグループを知っていただける機会に」というガッツそのままのフルネームPRで、発言に説得力があった。

ちなみに、囲み取材と並行し、例年ホールの客席で行われていたステージ取材は、今回は一般紙、スポーツ紙のカメラマンによる代表撮影のみ。パフォーマンスの全体像は、NHKのオフィシャルが撮影したステージ動画を別室で見る、という形だった。

取材する側ばかりでなく、される側も多くが「さみしい」と口にしていた今年のリハ取材。と同時に、どのアーティストもステージに立てる喜びを語り、誰もが「元気を届けられるパフォーマンスを」と意気込んでいた。

モニター越しに伝わってきたそれぞれの熱量を思い返しながら、いろいろあった2020年の紅白歌合戦を見届けたい。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)