古希を超えた73歳という高齢で、今日23日にメジャーデビューする男性歌手がいる。青森県出身の石塚ひろしで、中学時代に志した歌手になる夢をデビュー曲「越冬(ふゆ)の酒」で60年越しにかなえる。発売元キングレコードによると、男性ソロのプロ演歌歌手としては最高齢デビュー。「同年代の人たちにエールを送るためにも頑張りたい」と意気込んでいる。

 弘前市で8人兄弟の末っ子として生まれた。中学卒業後に集団就職で上京すると、新聞配達やホテルのドアボーイなどに従事。東京・新宿で流しの歌手として歌ったこともあったが、1968年(昭43)に佳子さんと結婚したことをきっかけに生活のため、音楽から遠ざかった。運送業に就職するとトラックのハンドルを握りながらラジオから流れる曲に合わせ、声を張り上げるのが楽しみだった。

 その後、尺八や三味線などを習い始めた。昨年10月18日に佳子さんが2年の闘病の末に死去。生活のために夢を諦めた夫のことを気に掛け「いつかは歌手デビューをしてほしい」と常々話していたという。今年の一周忌。妻の墓前で1人息子や3人の孫たちにデビュー報告をした。レコーディングはその5日前に終えた。石塚は「3人の孫たちは『冗談でしょ』と驚いていた」と笑った。

 「自分にとっては60年越しの夢であり、妻の願いでもあった歌手デビューが決まりました。目標はレコード大賞の新人賞です」とガッツポーズで決意表明をした。【松本久】

 ◆石塚ひろし 1942年(昭17)6月13日、青森県生まれ。中学卒業後に集団就職で上京。ラジオから流れる三橋美智也、三波春夫らに憧れて歌手を志した。30歳をすぎて尺八や津軽三味線を学ぶ。「孫」のヒットで知られる大泉逸郎(73)と同じ芸能事務所に所属、「73歳の同級生同士。いつかデュエット曲を出したい」。

 ◆高齢歌手デビュー 職業歌手ではない「企画もの」としては、長寿姉妹きんさんぎんさんが99歳で発売した「きんちゃんとぎんちゃん」(92年)が有名だ。また、女優浦辺粂子さんが82歳で出した「わたし歌手になりましたよ」(84年)、俳優左卜全さんが75歳でリリースした「老人と子供のポルカ」も知られる。ほか、ラッパー坂上弘は88歳でアルバム「千の風になる前に」でメジャーデビュー。沖縄・小浜島の平均年齢84歳の女性グループ「KBG84」は今年10月にメジャーデビューした。