放送倫理・番組向上機構(BPO)は15日、昨年3月8日に放送されたフジテレビのバラエティー番組「ニュースな晩餐会」に人権侵害があったとの判断を示した。

 同番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内いじめ行為を取り上げ、役者による事件の再現ドラマと、関係者のインタビュー映像や隠し撮り映像、会話の隠し録音などを随所に織り込んだ映像を放送。この放送に対し、食品工場で働く契約社員の女性が、再現ドラマで自身が社内イジメの“首謀者”とされ、ストーカー行為をさせていたとされ名誉を毀損(きそん)されたと申し立てていた。

 BPOは申し立てを受けて審理し、放送内で職場の駐車場の映像や、申立人の職場関係者に関する情報が含まれていることや、取材協力者でもあった事件関係者らが、本件放送が行われることをあらかじめ職場などで話して回ることも十分予想できる状況下であったことなどから、「本件放送内容は、職場の同僚にとって、登場人物が申立人であると同定できるものであった」とした。

 またフジテレビに対し、「本件放送が基本的には現実の事件を再現するものとして視聴者に受け止められるにもかかわらず、「被害者の証言に基づいて一部再構成しています」等のテロップを付したことなどから、本件放送が現実の事件の真実から離れても問題はないと安易に思い込み、取材においても一方当事者への取材のみに依拠して職場内での事件の背景や実態を正確に把握する努力を怠り、真実とは認めがたい申立人に関する事実を放送して申立人の名誉を毀損(きそん)してしまうこととなった」とした。

 BPOは「本件放送には申立人の名誉を毀損(きそん)する人権侵害があったと言わざるをえないと判断した」とし、「フジテレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために、人権と放送倫理にいっそう配慮するよう勧告する」とした。