「映画の父」と言われるフランスのリュミエール兄弟の作品群が90分に編集され、「リュミエール!」のタイトルで28日から東京都写真美術館で上映される。

 兄弟がシネマトグラフと呼ばれる撮影方法を発明したのは122年前。映画史の第1ページを飾ったのは「工場の出口」だ。シネマトグラフの35ミリフィルムは17メートルしかなかったので上映時間は約50秒。自社工場から出てくる大勢の従業員を通りの反対側から撮ったものだが、4Kで復元された映像からはそれぞれの表情のバリエーションも見てとれる。総じて笑顔、馬や犬も登場してやたらににぎやかだが、そもそも自社のPR映像だったそうだから、この妙な明るさにも納得がいく。

 モノクロ映像に自然光で浮かび上がる人々の表情や動きを見ていると、改めて映画の原点は「光」と実感する。兄弟が10年間で撮影したのは1422本にのぼり、今回はこのうち108本が紹介される。交通や通信がまだまだ不便だった時代に欧州を始め、エジプト、アメリカ、ベトナム、そして日本を含む各国を巡って現地の様子を情感豊かに切り取っている。

 ベトナムの子どもたちの豊かな表情、日本では剣術稽古の緊迫感…限られた条件の中で恐ろしいほどクオリティーは高く、当時の観客の驚きは想像に難くない。

 ドキュメンタリーを装いながらしっかり演出がほどこされているうえ、移動撮影、トリック、リメーク…現代につながる撮影技術がすでに随所で使われている。作品を見たマーティン・スコセッシ監督は「世界の至宝だ」と驚きを新たにしたそうだが、一見の価値はある。