浜松医科大(静岡)看護学科出身の女性シンガー・ソングライターがいる。結花乃。2016年9月にCDデビューを飾り、昨年11月には新曲「快速流れ星」をリリースした。透明感の歌声とファニーフェースで人気を上げているが、今も生まれ育った静岡県富士市内に住んでいる。

 「富士市の空気を吸っていると、曲のイメージがわいてくるからです。ただ、都内での仕事も多いので、よく往復しています」

 富士市立須津小、須津中出身。高校は進学校の富士に進んだ。

 「読書、絵を描くことが好きでした。中学のテニス部で人とコミュニケーションが取れるようになり、高校入学後、富士駅前のカラオケボックスで友達から『歌ってみなよ』と言われ、初めて人前で歌いました。音程を取るのも苦ではなく、『練習すれば、もっと上手になる』と言われ、カラオケにはまりました」

 人生を左右する転機は、高3の文化祭だった。

 「テニス部の思い出作りでバンドを組みました。私はボーカルで、約100人の前で歌いました。人前で思いを伝えている。血がめぐっている。『これ、好きかも。本当にやりたいことだ』と思った瞬間でした」

 ただ、浜松医科大受験は決めていた。

 「『やっぱり、音楽をやりたい』とは言えませんでした。みんなも必死に勉強していて、迷っている暇もありませんでした」

 一般入試で浜松医科大だけを受けて合格。軽音楽部に入ったが、音楽で生きていくすべが分からず、看護師として病院に就職した。

 「自問自答の日々でした。配属先は重病の患者さんが多い病棟で、若くして亡くなる方もいました。そんな環境で、ある患者さんから『歌が好きなら、どうしてたくさんの人の前で歌わないの。やれるうちにやらないと後悔するよ』と言われました。その言葉が頭から離れなくて、上司や両親に思いを告げました」

 音楽の専門学校に通いながら、オーディションライブに不合格の日々。専門学校を卒業するタイミングで「潮時か」と思い始めた中で、現在の所属音楽事務所から声が掛かった。

 「本当に奇跡のような出来事でした。夢がこぼれ落ちる寸前でしたから」

 デビュー後は、富士市のブランドメッセージソング「いただきへの、はじまり」の作詞、作曲を手掛けるなど、地元での活動も積極的に展開している。だが、目標は全国的にメジャーな存在になることだ。

 「具体的には、日本武道館のステージに立つことです。事務所が武道館のすぐ近くにあるんです。大きな目標ですが、少しずつ近づいていきたいです」

 今年でデビュー3年目。焦らずに上を目指していく。【柳田通斉】

 ◆結花乃(ゆかの)年齢非公表。1月10日、静岡県富士市生まれ。浜松医科大医学部看護学科卒。中学、高校はテニス部。高校時代は県東部大会を勝ち抜き、県総体初戦で敗退。大学の志望理由は「人を救う仕事に就きたかったから」。158センチ。