新型コロナウイルスに感染して入院、4月下旬に退院したグラビアアイドルのソラ豆琴美(27)が6日までに日刊スポーツの取材に応じた。意識がもうろうとするほどの重い症状から治療効果が期待される新型インフルエンザ薬「アビガン」を服用し回復した。胎児に奇形を起こす催奇形性などの副作用がある同薬の使用を決断するまでの葛藤、今なお続く新型コロナへの恐怖、感染者や家族への差別など赤裸々に語った。

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4月上旬、熱や胸の圧迫感などを感じるようになった発症日から5日目に新型コロナの陽性が判明、6日目に入院した。入院時、医師からアビガンなどを使用する適応外治療の説明を受けた。「妊娠やその可能性があると(胎児に奇形を起こす)催奇形性の可能性がある」といい、服用には同意書にサインと、妊娠検査が必要と言われた。

入院初日のCT検査で肺炎は確認されなかった。平熱で「若い人は軽症で済むという話を信じていたので飲まない」と服用を拒否した。医師からも「そうだね、軽症だしね」と言われた。当時、その病院では1人服用したが、結果は分かっていなかった。だが、発症から8日目、入院3日目に容体が急変。意識がもうろうとし、せきをすると喉から胸までむずがゆく「気管を取り除きたい」と思うほど苦しい症状に襲われた。

翌日、電話越しに母から「ナースコール押して、死んじゃう」と泣かれ、「怖いとか言うよりも、何かにすがりたい」と思い服用を決意。「高熱で苦しい。適応外治療受けたいです」と伝えた。1日朝夕2回。最初の2回は9錠、以後4錠ずつ6日間にわたり服用した。服用から5時間後には歩けるようになり、翌日には、つらさの感覚が半分以下にもなった。PCR検査を3回受け、2回続けて陰性が確認され、発症から21日目に退院した。しかし、今も味覚嗅覚は完全には戻っていない。アビガンの副作用は約1週間といわれている。「今後もし子どもができても、生まれてくるまでずっと不安に感じてしまうと思う」と本音を漏らした。

「死ななかったから平気だったわけではない。軽症でも、目が覚めなくなるんじゃないか、明日が来ないんじゃないか」と入院中に感じていた恐怖感を吐露した。今でも恐怖から、ニュースは友人と電話しながらでないと見られないという。そして「人と会うことが怖い。感染者の存在が人の命を奪う可能性だってある」とも感じている。「闘病は想像が付かないくらいつらい。それを分かってほしい」。世間では休業要請や外出自粛など大変な状況が続いているが「自分と他人を守ることにもなるので、どうか、外出自粛をして欲しい」と涙ながらに訴えた。【佐藤勝亮】

 

治療経緯

▼発症日(4月上旬) 熱37・5。保健所に電話

▼3日目 PCR検査

▼4日目 味覚嗅覚失う

▼5日目 陽性判明

▼6日目 入院。熱36・5。CT検査で肺炎にはなっていなかった

▼8日目 容体が急変

▼9日目 熱38・9。アビガン服用開始

▼10日目 熱37・6。つらさが10→4

▼11日目 熱37・5。せきの量が減る

▼12日目 熱36・5。4日ぶりに風呂。たんが黄色→透明に。つらさ10→2

▼13日目 PCR検査

▼14日目 「陽性」。朝でアビガンを飲み終える

▼17日目 PCR2回目

▼18日目 「陰性」

▼19日目 PCR3回目

▼20日目 2回目の「陰性」。医師と初めて握手

▼21日目 退院

 

◆ソラ豆琴美(そらまめ・ことみ)1992年(平4)5月20日、神奈川県生まれ。歌手、グラビアモデル、ライブアイドルなど幅広く活動。芸名は4文字名字に憧れがあり鼻歌まじりに考えた結果、そらまめに決定した。11年、活動開始。14年、TSUTAYAプリンセス2014グランプリ。16年1月、芸能界を引退したが、同5月活動再開。身長159センチ、血液型B。

 

◆アビガン 富士フイルムHD傘下の富山化学工業が開発した薬。一般名はファビピラビル。新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの複製を阻む。厚労省のホームページによると、動物実験において初期胚の致死及び催奇形性が確認されている。妊婦または妊娠の可能性がある人には投与できない。妊娠する可能性のある女性、させる可能性のある男性には、投与期間中及び投与終了後7日間は、極めて有効な避妊法の実施が必要とされる。5月中の薬事承認を目指している。