北朝鮮の強制収容所の内情を生存者の証言を参考に描きつつ、過酷な環境で生きていく家族とその仲間たちが成長していく姿を3Dアニメーションで描いた日本、インドネシア合作映画「トゥルーノース」が21年、日本で公開されることが決まった。23日、配給の東映ビデオが発表した。

「トゥルーノース」は、清水ハン栄治監督が収容体験をもつ脱北者にインタビューを行い、10年もの歳月をかけて作り上げた。金正日体制下の北朝鮮を舞台に、50年代から始まった「在日朝鮮人の帰還事業」で北朝鮮に渡った幼い兄妹ヨハンとミヒは、父親が政治犯の疑いで逮捕され、母とともに強制収容所に入れられる。凄惨(せいさん)を極めた極寒の収容所での暮らしの中、食料を確保するために引き起こしたトラブルにより母が殺害され、自暴自棄となり次第に追い詰められていくヨハンは、死に際の母の言葉がきっかけで本来の自分を取り戻していく。

清水監督は「危なっかしい素材を選んだね、とよく言われます。人権や外交はさておき、僕が興味があったのは『生きるか死ぬかの環境下で人はどう振る舞うのか?』。収容所では倫理観を放棄し堕落する人もいるし、人としての尊厳を守りぬく人もいる。その違いをうまく映像化し、平穏な世界に住む皆さんに『よりよく生きる』ヒントを提供できればうれしいです」とコメントした。

「トゥルーノース」は、アニメ映画の世界最高峰を選ぶアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)の「長編コントルシャン部門」にノミネートされ、ワルシャワ映画祭(ポーランド)で特別賞、ナッシュビル映画祭(米国)ではグランプリを受賞。東京国際映画祭の「ワールド・フォーカス部門」、富川国際アニメーション映画祭(韓国)、レインダンス映画祭(英国)に出品。収容所内の過酷な現状を描くだけでなく、家族愛、仲間との絆、友情、死にゆく者への慈しみの心情などを描き、実写でなくアニメーションにすることで、あらゆる表現を可能にした作品だ。