昨年11月28日に77歳で亡くなった歌舞伎俳優中村吉右衛門さんを「偲ぶ会」が21日、都内ホテルで催され、歌舞伎、芸能関係者、後援会、劇場関係者ら650人が参列した。

祭壇は胡蝶蘭、バラ、カーネーション約5000本の花で彩られ、本名の波野辰次郎にちなんで、波を思わせる曲線がイメージされた。09年に撮影されたという写真は、祖父で養父初代吉右衛門さんの鏡台の前で撮影されたもので、まっすぐなまなざしの中に柔和さが見られる印象的な写真だ。

松竹の迫本淳一社長、歌舞伎座の安孫子正社長が弔辞を述べ、吉右衛門さんを振り返る映像が上映された。

開式前に取材に応じた妻知佐さんは「昨年はコロナ禍ということで(葬儀を)内々でさせていただきましたが、一周忌ということで『偲ぶ会』を催すこととなりました。1年早いですねとお手紙をいただくのですが、早いのか遅いのか、実感がないわけではないのですが、言葉で整理ができておりません」と振り返った。

また、「熊谷陣屋」「盛綱陣屋」「俊寛」など当たり役の写真や、舞台裏、楽屋での吉右衛門さんなど、写真家鍋島徳恭さんが撮影した30点ほどの写真が展示された。

「義経千本桜 渡海屋・大物浦」で、平知盛が大いかりを抱いて海中に飛び込む名場面を裏側から撮影した写真もあり、知佐さんは「私たちは決してみることのできない写真もあります」と説明。さらに「吉右衛門にとっては(初代吉右衛門の芸を伝える)秀山祭をさせていただけたことが大きかった。孫の初お目見え、初舞台、舞台を一緒にできたことがありがたいことでした」と話した。

会の最後に知佐さんは「いかに多くの方に支えられていたことかと感謝申し上げます」と述べ、「『じいたん』と慕ってくれた孫たちの絵や手紙に囲まれて旅立ったことをご報告申し上げます」と、吉右衛門さんの最期の様子を明かした。

フジテレビ系「鬼平犯科帳」で共演した多岐川裕美、尾美としのりも参列。