米国務省は、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大を受け、日本全土への渡航警戒レベルを、「注意を強化」に1段階引き上げた。日本をめぐっては、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の検疫態勢、「陰性」とされた人の下船方法、感染経路不明例の増加などに対して、世界中から日本政府への批判や警戒が日々強まっており、東京オリンピックへの影響も懸念される。

米国は、日本全土への渡航警戒レベルを4段階中で下から2番目に引き上げ、高齢者や持病のある人に、不要不急の日本旅行は延期を検討すべきとした。渡航予定のある人は、医師に相談するよう要請。訪日の際は、病気の人との接触を避けたり、手洗いなどの徹底の必要性を指摘した。

従来はレベル1の「通常の注意」だったが、「経路不明な感染が広がっている」ことを理由に挙げた。韓国もレベル2にした。米疾病対策センターも日本と韓国を旅行予定の人に対し、注意情報を3段階中2番目の「警戒」に引き上げた。

台湾も、日本旅行をレベル1「注意」から、レベル2「警戒」に引き上げたばかり。イスラエルは、過去14日間に日本と韓国に滞在した外国人の入国を拒否することにした。ミクロネシア連邦、トンガ、サモア、キリバス、ソロモン諸島、韓国、タイ、ブータンも日本への渡航制限や延期を呼びかけている。ミクロネシア連邦など小国には、日本からの直接入国禁止のところも出ている。インドネシアでは、日本人の入国拒否例も起きた。

背景には、日本政府への批判や不信感の高まりもある。経路不明の感染が全国に広がっている。クルーズ船からの下船では、乗客23人を検査していなかった。船内作業の厚労省職員も検査なしで通常勤務に戻していた。陰性だった乗客の下船対応も、日本だけが他国と異なった。米国、カナダ、英国などが下船後14日間、施設での隔離措置を取ったのに対し、日本は不要不急の外出自粛と健康チェックを求めたが、公共交通機関などで帰宅させ、日常生活に戻した。

各国では下船者の感染確認が相次ぎ、22日時点で米国18人、オーストラリア6人、イスラエル1人の計25人に上る。日本でも22日に栃木県の60代女性の感染が分かった。14日に受けた検査は陰性で下船し、70代夫とともに公共交通機関と友人の車で帰宅。買い物にも出たというが、21日に発熱があった。

中国では治療後に再び感染した可能性があるケースも報告されている。国際社会で日本の安全性や信用が崩れつつある。

◆米国の渡航警戒レベル 米国務省が、米市民の渡航や滞在先の国・地域に関し4段階のレベルに分けて出す安全情報。一番下のレベル1が「通常の注意」、2は「注意を強化」、3が「渡航を再検討」、最も厳しい4は「渡航中止・退避勧告」となっている。これとは別に、米疾病対策センター(CDC)も感染症などの危険度に応じて「注意」「警戒」「警告」の3段階の渡航情報を出している。