一般社団法人・日本水商売協会(東京都文京区)は4日、オンラインキャバクラ大手の「スマキャバ」(同台東区)と、新型コロナウイルスの感染拡大で営業の自粛、休業が続く水商売業界の支援に向けて業務提携を結んだと発表した。

水商売業界は、密閉、密接、密集のいわゆる“3密”が避けられない業態だ。一方、オンラインキャバクラは、女性キャスト(接客スタッフ)と客が直接、対面しないことから、苦境が続く水商売業界の活路の1つとして採用する動きが各地で出ており、サービスを立ち上げる事業者もいるという。

ただ、サービスのほとんどが事業者と女性キャストの直契約のため、苦境に立たされている店舗を支援する仕組みになっていないため、店舗の経済活動が損なわれる懸念がある。

また実店舗所属のキャストではない素人の女性を、あたかも水商売従事者のようなイメージで打ち出す事業者も多くみられ、プロの接客を提供する水商売業界自体の価値を損なう可能性も懸念されている。

日本水商売協会の甲賀香織代表理事は(39)「事態が収束しても、いつまた休業要請という事態になってしまうかは分からない。そこで、この状況を受け入れ、変化に則した営業形態を探していくことが生き残っていく術」と語った。その上で、スマキャバとの業務提携のメリットとして

<1>オンライン接客と対面の接客、両方からの収益を見込める

<2>新規客を獲得し、既存客のフォローができる

<3>店舗と女性キャスト個人の両方が共存できる

という3点を挙げた。

水商売業界は、東京都の小池百合子知事が3月23日の会見で「ロックダウン(都市封鎖)」の可能性に言及し、同30日には夜間接客を伴う飲食店でのクラスター(感染者集団)形成が報告されているとして、キャバクラやバー、ナイトクラブなどへの入店自粛を呼び掛けたことで休業が相次いだ。

その後、政府が4月7日に7都府県に緊急事態宣言を発令し、同16日に対象を全国に拡大し、国民には不要不急の外出の自粛、飲食店には休業や営業時間の短縮が要請されたことから、夜の街から客足が遠のき、危機に陥った。5月14日に全国39県、同25日には5都道府県で緊急事態宣言が解除されたが、厳しい状況は変わらない。

都庁で2日夜に開かれた第29回東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、東京アラートが発動された際も、この1週間の都の感染者114人のうち夜の街に絡む感染者は32人と約3割に上ったこと、うち約半分が歌舞伎町などのある新宿で、ガールズバーやホストクラブの感染が確認されたことが問題視された。

小池知事は「かねて申し上げておりますように、夜の街関連、とりわけ新宿エリアの飲食、接客業関係者が多いという報告を受けている」と言及した。

日本水商売協会は、4月上旬から自主的に感染拡大防止のガイドラインを策定し、東京都には同15日に担当者に電話し、メールで送付したが明確な回答はないとした。都の担当者は2日、日刊スポーツの取材に「(日本水商売協会からの)要望は承知しているが、自主的にガイドラインを作るのが全てではない。業界が自主的に作るガイドラインが、適正かつ防止できるかどうかは都だけで判断は出来ない」などと答えている。

甲賀代表理事は「苦しい中で営業を自粛していた店舗と、そうでない店舗、感染防止対策をしていた店舗と、そうでない店舗を、ひとくくりにしないでほしいです。モラルレベルが何段階にも分かれているのに、ひとくくりに『夜の街』とすることで本気で感染症対策の話をしたいわけではない意図を感じます」と怒りをにじませた。その上で「現実的な感染症対策の話をしたいです。感染者を追うことが出来ることと、経済が死なないこと。どちらも、ちゃんとやれば出来るのに」と首をかしげた。【村上幸将】