女優竹内結子さん(40)が27日、東京都内で死亡した。自殺とみられる。新型コロナウイルスの感染拡大で、自宅で過ごす時間が増え、他人と関わる機会が激減するなど、社会に大きな変化がもたらされる中、国内の自殺者数は増加傾向にある。コロナ禍と自殺者数の増加に関連はあるのか。社会心理学を専門とする、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの関谷直也准教授(45)に聞いた。【取材・構成=佐藤勝亮】

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芸能人だけ自殺者数が増えているというよりは、コロナ禍において多くの人が精神的な症状を抱えるようになり、その一角が、芸能人にも出ているということだと思います。

1人1人の原因はそれぞれだと思いますが、自殺者の統計数が増えるのは社会状況が関係していると、昔からよく言われています。典型的には、バブル崩壊後は自殺が増えたとか、社会現象と、ある意味連動しているというのが一般的な見方です。今年に関して自殺者数が増えているとしたら、コロナが大きな影響を与えていることは間違いないといえます。

コロナ禍で、仕事ができなかったり、いろいろな形で生活に影響が出ています。ずっと家にいなければならず、コロナ禍以前の「日常」のようには、外出も外食も行けなくなりました。特に緊急事態宣言の間は、できるだけ家に居るようにと強制され、どこかに行くということができず、ストレスになったというのは、誰しも共通して経験した事だと思います。

自殺をする人は、自分だけで悩みを抱え、誰にも話すことなく命を落とす事が多く、人と会う回数が少なくなったコロナ禍では、周りの人が気付くことも難しくなっています。

今、社会全体でコミュニケーションの頻度が減り、悩みを抱えている人は、自分の心の変化に気付くこと自体が難しくなっています。もし、悩んでいるような事がある人は、周りの人やカウンセラーなどに相談したり、1人で抱え込まないことが大事だと思います。

◆自殺者は増加傾向 警察庁の統計によると、今年8月の全国の自殺者数は14日集計の暫定値で1854人で、昨年同月の1603人より251人多い。今年6月までは前年同月より少なかったが、7月は1818人で、昨年同月の1793人より25人多く、増加に転じていた。自殺者数の増加を受け、加藤勝信厚労相(現官房長官)は9月11日の大臣会見で「新型コロナウイルス感染症の影響もあって、今後の生活に不安を感じている方も多いと思う」とし「ひとりで悩まず相談していただきたい」と呼び掛けた。

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