第43回将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)決勝、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)対斎藤慎太郎八段(29)戦が20日、千葉市「幕張メッセ」で公開対局として行われた。ともに小3時にJT主催の子ども大会低学年の部を制した者同士が、プロとしてJT杯で初めて優勝を争った一戦は、後手の藤井が114手で勝って初Vを果たした。

また、20歳4カ月での優勝は、羽生善治九段が1991年(平3)の第12回大会で達成した21歳2カ月を上回る最年少V記録となった。

藤井の攻めが、約4200人の観客の前で加速した。2九にある相手の飛車が照準となった。56手目の後手1八香成以下先手2七飛後手4九角先手2六飛後手2五香。飛車の頭に香を打つこの手は、斎藤が見落としていた。続く62手目、後手2六香と飛車を取った。「これで指せると思いました」。

ここから仕掛けた。時折見せる渋い受け将棋は、裏芸。切れ味の鋭さが十二分に発揮される一直線の攻め合いという表芸で、栄冠を手にした。「うれしく思います」と笑顔を見せた。

竜王を獲得して史上最年少4冠の後に迎えた昨年の決勝では、竜王を奪取した豊島将之九段(32)に敗れた。JT杯のような早指しは「得意じゃない」とする一方、「決断良く指したい」とも言う。「今回は持ち時間の10分を有効に使って、時間配分を気をつけました」と、対策を披露した。

JT主催の子ども大会には幼稚園の年長組で初めて参加した。「小2の時に初めての決勝で(角をタダで取られる)すごいポカをして負けその経験から、小3の時は落ち着いて対局して優勝できた」。18日に都内のホテルで行われた、決勝記念トークイベントでは思い出を話した。修正力は、11年ぶりのJT絡みの優勝でも生かされた。

次の目標は25、26日に福岡県福津市で行われる竜王戦7番勝負第5局で広瀬章人八段(35)に勝ち、竜王初防衛を果たすことだ。

◆将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯) 1980年(昭55)創設。前回優勝者(今回の場合は豊島将之JT杯覇者)と、8大タイトルホルダー(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)に、賞金ランキング上位者を加えたトップ棋士12人による勝ち抜き戦。地方転戦して、公開対局で優勝を争う。持ち時間各10分。使い切ったら1手30秒未満秒読み。ただし、秒読み後1分単位で5回の考慮時間がある。優勝賞金500万円、準優勝150万円。「テーブルマークこども大会」は今年で21回目。