フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

リーズ復活の裏、若い選手売却でクラブ財政立て直し

さて、今回は17年ぶりにプレミアリーグに復帰が決まったリーズ・ユナイテッドを取り上げたいと思います。リーズといえば、1990年代後半から2000年代初頭にかけて旋風を巻き起こしたことは記憶に新しく、特に1999-2000シーズンにはプレミアリーグで3位に入るなど健闘を見せました。翌年の2000-01シーズンでは初のチャンピオンズリーグ(CL)で大躍進。準決勝でバレンシアに敗れたものの、その勇敢な戦いぶりから “ミラクル・リーズ”と呼ばれました。ところがその後クラブは深刻な財政難に陥ってしまい、苦肉の策で主力選手を放出せざるをえない状況に。結果として2003-04シーズンにはチャンピオンシップ(実質2部)に降格してしまい、2007年には破産申請するなど財政状況が悪化し、そのまま低迷期に入りました。

リーズのビエルサ監督(2010年6月25日撮影)
リーズのビエルサ監督(2010年6月25日撮影)

そして時は流れ、今季リーズがプレミアリーグへと戻ってくる訳なのですが、現在チームを指揮するのは、アルゼンチンの名将マルセロ・ビエルサ。2018-19シーズンにチャンピオンシップで3位になると、就任2年目の昨シーズンはチャンピオンシップで優勝し、プレミアリーグ復帰を果たしました。

そもそもクラブ自体のことを辿ると、創設自体は1904年までさかのぼります。創設されたリーズ・シティと名付けられたフットボールクラブから引き継ぐ形で1919年に創設されたとあります。あのボビー・チャールトンの兄であるジャッキー・チャールトンが所属した1960−70年代にリーグ優勝するなど大躍進。その後は前述の90年代の躍進となります。現地の資料を読み込んでいると、財政難の原因は大型補強の失敗のようで、全体的に選手への給与過払い、そして選手補強に対するお金のかけ方と結果のバランスが崩れたことにあると報道がなされていました。

そんなクラブがなぜここまで戻ってきたのかという部分が大切です。実はこのクラブの現在のオーナーはイタリア人実業家のアンドレア・ラドリッツァーニ。この人物はスポーツマーケティング企業のMP & Silvaの共同創業者であり、Aser Venturesという投資機関を立ち上げるなどした後、スポーツチャンネルのブロードキャスティング会社・イレブンスポーツを立ち上げて財をなした実業家です。2017年にリーズを買収しましたが、またたく間にクラブを再建し、現在ではカタールにクラブを売ろうとしているという噂も。ここもポイントで、カタール にはあのBeIN Sportsがあるわけで、このオーナーでもあるナースル・アル・ハライフィ(現PSG会長)はおそらく放映権ビジネスを手がける中でのビジネスパートナーでもあります。先月よりバレンシア買収報道も出ていることからこの辺りのマイナス超過レベルのクラブを買収し、立て直して売却するビジネスに目が行っている可能性は高いとも感じます。

リーズの収支を見てみると、収益はおおよそ5,000万ポンド前後。つまり日本円で65億円ほどの規模。Jリーグのチームとほとんど変わりません。当然プレミアリーグに昇格する事で放映権の分配が増加しますから、下位クラブでも130−150億円ほど自動的に分配されます。そのなかで、さらに収支の細かい部分を見ていると、どうも移籍ビジネスによる売り上げが多いことに目がいきます。ここ10年ほどのリーズの現地情報を見ても、若いタレントのある選手を高額で売却しており、クラブの財政を立て直しに貢献したのはこの部分ではないかと感じます。

Jリーグの現状からすると、ユース育ちの選手が他クラブに売却という形でトップ契約するようなことは今のところほとんどありません。この部分が活性化することが、ひょっとしたら小さなクラブが財政面で大きくなりえるヒントになるのかもしれません。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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