季節は一気に変わった。
11月12日、全国高校サッカー選手権大会の神奈川県予選決勝が行われた。三ツ沢の気温は公式発表で11・1度。つい1週間前、4日に準決勝が行われた等々力では強い日差しの下、半袖シャツで過ごせた。公式発表は27・5度、その気温差は16・4度である。
102回目を数える伝統の大会で「冬の風物詩」とも言われる選手権。肌に突き刺さる寒風が、どこか気持ちを厳かなものにしてくれる。スタジアムに漂う、この季節感こそ正しい。また新たな冬が巡ってきた。
■日大藤沢2大会連続の全国切符
注目の一戦は、日大藤沢が桐蔭学園を1-0で下し、2年連続7度目の全国切符を手にした。
技術の高い両チームだが、勝ちたいという思いが前面に強く出ていた。どちらも攻守の切り替えが速く、インテンシティの高さが目立つ好ゲームだった。
決勝点は前半20分だった。立ち上がりから押し込まれていた日大藤沢が一瞬のスキを突いた。
DF裏への浮き球パスをFWが頭で流した。そこへ中盤の底から走り込んだMF荻原大地(3年)が相手GKより一瞬速くボールに駆け寄り、浮かせてゴールへと流し込んだ。
前後半を合わせて80分、アディショナルタイムも含めれば85分ほど。ピッチの選手を鼓舞し続ける吹奏楽の軽快なメロディーに、華やかなチアリーダーの踊り。さまざまな演出が選手の気迫を後押しする。同時に見る側の気分も高まる。選手権決勝という特別な舞台は、選手だけでなく会場のすべての人によって形作られ、最高の思い出へと昇華されていく。
■苦労人がヒーローになる醍醐味
試合後のミックスゾーン。決勝点を挙げた荻原の言葉に耳を傾けた。
1年前、全治3カ月ほどの大けがに見舞われた。全国大会はおろか、その後の新チームとなっても試合に絡めなかったという。
「はい上がるのに苦労しました。やれることを積み上げていって(春の)関東大会予選、インターハイ予選から試合に絡めるようになりました」
同じボランチのポジションには主将の佐藤春斗、U-17ワールドカップ(W杯)に参加中で不在の布施克真もいる。そんな中、16番を背負う「はい上がってきた」苦労人が大一番でヒーローとなった。これぞスポーツの醍醐味(だいごみ)だろう。
公式戦の得点自体が初めてで、ゴール直後は仲間が感情を爆発させる中、表情を変えなかった。そこは「得点自体にあまり絡まないので、喜び方が分からない」と苦笑した。地道にコツコツと積み上げてきたものが、この決勝で花開いたのだろう。それゆえ、言葉の1つ1つにさまざまな思いが見え隠れした。
■かけがえのない日々こそが宝物
毎年、この高校サッカーの決勝取材に足を運ぶと、ピッチサイドからスタンドをじっくりと見渡す。そこには多くの現役部員たちの姿があり、その顔を見ながら想像を巡らせている。
誰もがピッチで輝くことを夢見て、努力を重ねている。しかし夢をかなえる者がいる一方で、かなわぬ者たちがほとんどかもしれない。それでも2年半ほどの限られた時間の中、誰もがかけがえのない日々を過ごしてきた。それこそが宝物なのだと思う。
ピッチで活躍する選手ばかりにスポットライトは当たるが、それは支える多くの部員の上に成り立っている。少し視点を変えれば、部の団結力がチームを強くしていることにたどり着く。色とりどりのスタンドの風景を見つめながら、そんなことに思いをはせた。
■変わらぬ高校生のひた向きな姿
1年、また1年と歳をいくつ重ねても、高校生のひた向きな姿は変わらず、こちらの心に訴えかけるものがある。そこに不完全でおぼろげな「青春」というものを感じる。
きれいな芝生のピッチを見つめ、晩秋の冷えた空気を大きく吸い込む。自然と表情と心が引き締まる。すると、あの不朽のメロディーが頭の中に流れる。
また、新たな冬の訪れを実感した。【佐藤隆志】









