エスプリが効いている。誰のこと?ってフランスのデシャン監督のことだ。

試合前日の記者会見、そしてモロッコ戦の試合後の会見と2日続けてデシャン監督の対応を見つめた。

今大会も何かと審判の判定には疑問符がつけられている。前日の会見ではメディアからも審判についての質問が出た。そこで「審判にミスはない。ファウルをするのは選手たちなんだ」「どのチームを応援するかによって、立場によって見方は変わる」と返した。

そしてこの日。得点を量産するエムバペについて質問があった中で、こう諭すように話した。

「キリアン(エムバペ)は利己的で自分のことしか考えていないと思っている人が多いようです。違います。彼はキャプテンとして模範的な選手であり、ゴール数だけでなく、ピッチ上での振る舞いも素晴らしい」

フランス語で言う「エスプリ(esprit)」とは、知性やウィットに富んだ機知のことを指す。ちょっとしたユーモアを交えながら話す。落ち着いた口調ではあるが、大きな目を見開き、矢継ぎ早の質問もテキパキと冗舌に、そして身ぶり手ぶりを交えながら返していく。頭の回転の早さが伝わるものだった。この知性があったからこそ、12年7月の就任から14年にも及びフランス代表をまとめあげられたのだと思っている。

そもそも10年南アフリカ大会では当時のドメネク監督に反旗を翻し、W杯大会中に練習をボイコットするという大騒動があった。結局その時は1次リーグで1勝もできずに敗退している。そのフランス代表を立て直し、18年ロシア大会から3大会連続でW杯4強だ。

フランスは移民が多く、約4人に1人が外国にルーツを持っている。さまざまな文化や価値観があり、それもひっくるめてフランスという国の魅力と映る。そういう背景があるからこそ、個性あふれる選手が多い代表チームをまとめるのは一苦労だと思う。

しかし今大会のフランスは特にチームのまとまりがいい。エムバペら個性の強いスター選手たちがチームのためにプレーする。強いのは当たり前だろう。

現役時代はボランチで自国開催だった98年W杯を主将として制した。ジダンらスター選手を後方から支え、「水を運ぶ人」としてチームには不可欠な存在だった。水を運ぶ人とは、ピッチ上のスター選手がおいしい水を飲むためにせっせとサポートすることの例えだ。“水を運ぶ人”がいるからこそ、スターが輝きを増すのだ。

筆者と同世代の57歳。顔に刻まれたしわが人間としての年輪の深さをうかがわせる。今大会で勇退するだけに、どういう結末を迎えるのだろうか。その最後に、エスプリの効いた言葉を聞きたい。【佐藤隆志】

2026年7月8日、前日会見中のフランスのデシャン監督(ロイター)
2026年7月8日、前日会見中のフランスのデシャン監督(ロイター)
モロッコ戦後、フランスのエムバペと喜ぶデシャン監督(AP)
モロッコ戦後、フランスのエムバペと喜ぶデシャン監督(AP)
フランス-モロッコ 後半、チーム2点目のゴールを決めたデンベレ(手前)を祝福するフランスのエムバペ=ボストン(共同)
フランス-モロッコ 後半、チーム2点目のゴールを決めたデンベレ(手前)を祝福するフランスのエムバペ=ボストン(共同)
モロッコ戦で先制ゴールを決めるフランスのエムバペ(ロイター)
モロッコ戦で先制ゴールを決めるフランスのエムバペ(ロイター)
モロッコ戦で先制ゴールを決めて喜ぶフランスのエムバペ(ロイター)
モロッコ戦で先制ゴールを決めて喜ぶフランスのエムバペ(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、先制ゴールを決め、喜ぶフランス・エムバペ。W杯通算20試合目に20点目のゴールとなった(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、先制ゴールを決め、喜ぶフランス・エムバペ。W杯通算20試合目に20点目のゴールとなった(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、チームの2点目を決めたフランス・デンベレ(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、チームの2点目を決めたフランス・デンベレ(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、チームの2点目を決め喜ぶフランス・デンベレ(ロイター)
フランス対モロッコ 後半、チームの2点目を決め喜ぶフランス・デンベレ(ロイター)
【イラスト】W杯北中米大会勝ち上がり(日本時間7月10日現在)
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ワールドカップ2026 得点ランキング ※9日(日本時間10日)現在
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【イラスト】フランス-モロッコ布陣図
【イラスト】フランス-モロッコ布陣図