ヴィッセル神戸が本拠地ノエビアスタジアム神戸の空調整備に動き出した。

今月13日に「空調設備導入に向けた改修工事を段階的に進めております」と発表し、神戸市とのタッグで28年夏の本格稼働を目指してプロジェクトを開始していることを明らかにした。

第1期の今回は、以前からあった座席下の設備を改修し、同15日のFC東京戦でテスト稼働するというものだった。その効果は当日の開場前、ピッチレベルでは空調が入っていることがはっきり認識できるものだった。2万人超の観客が入った後や、5階にある記者席では普段通りの蒸し暑さを感じることになったが、スタジアム全体を冷やすための方策はまだこれから。今回取得したデータを元に、神戸市が投資する10億円をどう活用していくかを見極めていくことになる。来夏にはさらに強度を上げた実験が行われる予定となっているので、進捗(しんちょく)が期待される。

6~7月に開催されたワールドカップ北中米大会では、一部の米国会場で米NFLのスタジアムが使用された。

そこでは7万人以上収容可能の大規模施設に空調が完備され、スタジアム外は40度近い猛烈な暑さでも、快適な観戦環境が整えられていた。正午や午後2時キックオフが可能になったのも、これらの設備が活用できたからだ。

ノエスタでの挑戦は、建設時から空調が組み込まれていたNFLスタジアムと異なるため、大型設備の導入ハードルや、それを動かすエネルギー供給の準備も限定的にはなる。それでも空調設備が整えば、遠方からのアウェーサポーターが足を運びにくい日曜日の試合を、夜から昼に移して開催することも可能になる。現段階ではピッチでプレーする選手が恩恵を受けられるレベルではないとはいえ、神戸の千布勇気社長は「毎回いい状態で戦えるようになれば、それはプラス。1つの“補強”みたいなものになる」とチームに与える影響も大きいとし、ミヒャエル・スキッベ監督も「何度下がるかわからないが、少しでも助けになったらいい」と期待を寄せる。

またJリーグ以外でのスタジアム活用にも有効だとし、音楽ライブ誘致なども含めて「お客様の間口を広げることもできるのではないか」と、千布社長は新規顧客の開拓にも意欲を見せた。

夏の冷房だけでなく、冬の暖房も利用可能となる施設が本格稼働となれば、年間1000万円以上のコストアップになると試算されている。そのため「価格はお客様にもご理解いただけるとありがたい」とチケット代に反映される可能性もあるが、気温に左右されなくなれば新たな価値となるはずだ。

千布社長が「圧倒的に快適な環境を提供できれば、エンタメの価値を上げることにつながる」と挑む神戸の空調チャレンジ。今後のスポーツ界に大きな影響を与える可能性もあるプロジェクトは、日本中から注目されながら進んでいくことになる。【永田淳】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)