女子W杯カナダ大会(6月6日開幕)で2連覇に挑む日本代表「なでしこジャパン」の23人が1日、東京都内のJFAハウスで発表された。注目のMF澤穂希(36=INAC神戸)は昨年5月以来の復帰を果たし、カナダでピッチに立てば、男女通じて世界初の6大会連続出場になる。神戸市内で会見した女子サッカーの象徴は「正直、少し泣きそうでした」と喜び、再び世界の頂点を目指す。代表は18日から香川・丸亀市内で合宿に入る。

 その瞬間、澤は神戸市内のクラブハウスにいた。選手への事前通達なしの代表発表。佐々木監督が「10番、澤穂希」と言った午後2時8分、MF川澄ら同僚とロッカー室におり、別室で会見の動画サイトを見ていた若手が騒ぐ。そのうちの1人が来て「澤さん、入りましたー」。興奮した近賀と大野に抱きつかれた。

 「正直、私自身は内心ドキドキしていた。(2人が)ハグしてくれてうれしかったし、正直、少し泣きそうになりました」

 昨年5月のアジア杯以来の代表復帰。背番号は佐々木監督が3月のアルガルベ杯で空き番にした「10」だ。11年ドイツ大会では得点王、MVPで初優勝に貢献したが「(その後は)病気、けがとたくさんあった」。12年3月には「良性発作性頭位めまい症」と診断され約1カ月半ピッチを離れた。昨季はINAC神戸も無冠。「(昨年5月の)アジア杯以来選出されなくて。そういう意味では(過去のW杯と)違う気持ちで(発表を)迎えた」。常に代表の中心で“カリスマ”と呼ばれた36歳にも確信はなかった。

 今季、INAC神戸の松田新監督のもとで再生した。「中2から知っている。言いたいことを言えるし、監督も言ってくれる」。2月には指揮官から相談なしで若手と同じランニングメニューを渡された。「もっと輝いてほしい」という親心にフルメニュー消化で応えた。「青のユニホームを着たいな、日の丸を背負って戦いたいという気持ちで励んでいた」。豊富な運動量で日の丸に返り咲いた。

 17歳だった95年スウェーデン大会から20年。6大会連続で出場すれば、男女通じて世界初。クラブ側はギネス申請の検討もする。国際Aマッチ197試合82得点を誇る澤だが「試合に出られる約束はされていない」と初心を忘れない。「連覇には技術うんぬんもあるが、必要なのは団結力。練習からも皆の背中を押せるように」。苦しかったら私の背中を見て-。名言を残した4年前と同じように、10番が先陣をきって縦横無尽にピッチをかける。【益田一弘】