【釜山(韓国)10日=松尾幸之介】日本(FIFAランク28位)のFW鈴木武蔵(25)が中国(同75位)との開幕戦でA代表初ゴールとなる先制点を挙げ、2-1の勝利に導いた。

東京オリンピック(五輪)世代を中心とした国内組の編成で臨んだ日本代表。中国のラフプレーに苦戦する場面もあったが、ジャマイカ人の父と日本人の母を持つ快足ストライカーがA代表出場6試合目の初ゴールで勢いをつけた。

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真冬の釜山で、鈴木がついに待望の1発を決めた。前半29分、素早いパス回しから抜け出したMF森島がゴール前に持ち込むと、猛然と前へ走る。グラウンダーのクロスに倒れ込みながら左足を伸ばし、A代表6試合目にしてうれしい初ゴール。「相手に走り勝つことだけを考えて走った。あとは感覚」と喜んだ。

今回は選手23人中、東京五輪に臨むU-22日本代表世代が14人を占める若手中心の構成。鈴木ら年長組は釜山での初練習時に森保監督から集められ「プレーで引っ張っていってほしい」と声をかけられていた。「自分ももう若くない。引っ張っていくとの自覚はある」と鈴木。中国のラフプレーにもめげず、みなぎる気合をその足に込めた。

ジャマイカ人の父と日本人の母を持つ。身体能力の高さは幼少期から健在だった。1歳4カ月の頃。母真理子さん(59)と当時住んでいたジャマイカから旅行で米ボストンを訪れた。知人宅からボストン美術館までの散歩道。歩き始めてまだ5カ月の鈴木は1度も抱っこやおんぶをされることなく約1時間半、自身の足で歩き通したという。「どんどん走って行っちゃって、追いかけるのが大変だった。なんて健脚な子なんだと思った」と真理子さん。この日のゴールも、一瞬の速さで相手を置き去りにする「健脚」の持ち味をいかしたものだった。

鈴木のゴールで勢いに乗ったチームは終盤粘る中国を2-1で振り切った。森保監督からは「本人の自信にもなったと思うし、DFでもチームに貢献してくれた」と後半27分に交代するまで走り続けたことをねぎらわれた。

J1で2年連続2桁ゴールを挙げたが、今年3月にデビューした代表では不完全燃焼が続いていた。今後もA代表定着へまだまだ争いは続く。「もっと得点を取れるようにやっていきたい」。ひとつ壁を越えた鈴木が、若き日本をけん引していく。