存続危機が伝えられているJ1サガン鳥栖は26日、株主総会と19年度決算報告を行い、一昨年度を大幅に上回る約20億1400万円の赤字を計上した。

12年のJ1昇格以来、最大赤字だった18年度の約5億8100万円を大幅に更新した。一方で純資産は2100万円。債務超過は回避しているものの、オンラインで取材に応じた竹原稔社長(59)は「天文学的な数字の赤字を出しているので、存続危機という言葉が合うのか、明日はあるのかということですが、これも経済」と言葉を絞り出した。

19年度の売上高は、約25億6000万円にもかかわらず、チーム人件費が約24億2000万円。主力協賛社離れなど、昨期の半分以下となる大幅な広告料収入減も影響した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でJリーグ開幕は白紙状態の今季は、さらにイバラの道が待ちかまえる。収入がない過酷な状況下、竹原社長は、危ぶまれる資金繰りについて「(資金が持つ期間は)他のJ1のクラブより早いと思っていただけたら。時期の想定は分かると思う」と危機感を募らせた。

融資などを受ける可能性にも触れ「市中銀行であろうと、なんであろうと、生き残っていくことを最大限にしていきたいので、全ての可能性を模索します」と言い、Jリーグからの支援については「使いますか(と問われれば)、使いたい」。今期は、チーム人件費を昨期の半分近い約11億円に圧縮予定。不要不急の支出を減らすなど徹底した経営努力を行う覚悟だが、深刻な経営難に陥っている。【菊川光一】

◆サガン鳥栖 97年に創設され、99年のJリーグ2部制移行に伴いJ2参加。11年にJ2を2位でJ1初昇格を決め、以降降格なし。J1最高順位は12年と14年の5位。今季は金明輝監督が指揮を執り、FW豊田陽平、MF高橋秀人らが所属。チーム名は長い年月をかけて砂粒が固まって砂岩「サガン」となり小さな力を集結し立ち向かうことと「佐賀の」に由来。チームカラーはブルーとピンク。本拠地は駅前不動産スタジアム(2万4490人)。

◆J1クラブの赤字決算 鳥栖は18年度も5億8100万円の赤字で、Jリーグ全55クラブで最大だった。営業収入が現行(2月~翌年1月)の決算期となった06年度以降、最も赤字額が多かったのは06年度の東京V(当時J2)の8億7800万円だったが、19年度の鳥栖はこれを大幅に更新した。過去13年度の最多赤字額の平均は約4億4400万円となっている。なお、最近発表された19年度の他クラブの決算では、仙台が4億2819万7000円の赤字となった。一方、浦和は純利益6198万円で9年連続の黒字となっている。