【ロンドン21日=上田悠太】陸上男子短距離の小池祐貴(24=住友電工)が20日の追い風0・5メートルの決勝で日本歴代2位となる9秒98を出し、4位に入った。五輪メダリストら世界の強豪と走った中での、9秒台だけに価値は大きい。9秒98は五輪、世界選手権の準決勝突破ラインを上回る。日本勢男子100メートルでは、32年ロサンゼルス五輪の「暁の超特急」吉岡隆徳以来となる、世界大会決勝進出の夢を、現実味あるものとする走りだった。

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小池は自己記録9秒台が7人並ぶ決勝のスタートラインに立った。予選を10秒09(向かい風0・3メートル)の4着で通過し、争ったのは世界歴代2位の自己記録9秒69のブレーク(ジャマイカ)、16年リオ五輪銅メダルのデグラッセ(カナダ)、17年世界選手権とも5位のシンビネ(南アフリカ)ら。そのレベルは世界選手権、五輪の準決勝と同等か、それ以上と言っていい。好スタートから先頭を争い、約51歩の細かいピッチを刻み、終盤も粘った。デグラッセにも0秒01差勝った。強豪を相手にした9秒98に数字以上の価値がある。

今秋の世界選手権(ドーハ)の代表入りも決定的な小池は「ここでベストな走りを出せないようでは世界選手権は戦えないと自分で勝手にプレッシャーをかけた。緊張感を持って走れた。大きい舞台で自己記録を出せた。自分の強みは、こういう舞台でしっかり力を出せること」と話した。

そのたくましさに夢は膨らむ。もし世界選手権、五輪の準決勝で9秒98を出せたら…。決勝進出はほぼ確実となる。世界選手権の準決勝突破ラインは17年ロンドン大会が10秒10、15年北京大会が9秒99、13年モスクワ大会が10秒00。五輪では16年リオ大会が10秒01、12年ロンドン大会が10秒02、08年北京大会が10秒03。いずれも9秒98より遅い。吉岡隆徳以来、87年遠ざかる男子100メートルの日本勢ファイナリスト誕生を期待を抱かせる。

ただ、小池も4位には満足できない。「これで4着だったら、実力が足りない」。世界選手権も五輪も準決勝各組2着までは自動的に決勝へ。残る2人、ないし3人は、決勝進出者を除いたタイム順で選ばれる。3着以内に入ることが重要だけに悔しがった。そして「日本に帰り、体を鍛え、その体に合った技術をすり合わせれば、世界選手権で、もうひと伸びいける」。最初は淡々としていた口調は、だんだん熱を帯びた。