東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に波紋が広がっている。本人は発言を撤回して辞任を否定したが、開催国の組織委トップの失言は、海外でも報じられた。欧米社会は女性差別に日本よりもはるかに敏感に反応する。特に五輪の根本原則は人種や性別などあらゆる差別を認めていない。批判の声は国内にとどまらない。
近年、国際オリンピック委員会(IOC)は男女間格差排除のため、女性の参加に力を入れてきた。20年前の00年シドニー大会で約38%だった女性の参加率は、東京大会では過去最高の48・8%が見込まれている。競泳のリレーや柔道の団体など男女混合種目が7競技で新設され、10競技で実施される。その大会を準備する中心人物の発言として、あまりに不用意だった。
日本では女性アスリートは増えたものの、競技団体など決定権のある機関の女性役員の割合は18年の統計で11%程度。30%を超える国もある欧米との差は歴然で、五輪開催国としては恥ずかしいレベルだった。JOCはその割合を40%に引き上げる目標を掲げていた。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」の発言は、その世界的な潮流にも逆行するものだった。
18年の東京医科大による女子受験者の合格数削減を思い出した。女子の点数を操作して男子の合格者を水増ししていた事実が発覚し、大学は世間の批判を浴びた。さらに驚いたのはある調査で半数以上の現役医師がその差別を「理解できる」と回答していたことだ。男社会をよしとする伝統は、今も昭和世代の意識の底に根強く残っている。差別発言の背景にはこの旧態依然とした日本社会が見え隠れする。
組織委トップの失言を報じるネット記事に投稿された、あるユーザーのコメントに目が留まった。「もうオリンピックと聞くだけで不愉快になる」。五輪まで敵役になっていた。複数のメディアの世論調査で今年の開催に反対する声は8割を超えている。コロナ禍による逆風はさらに勢いを増して、『五輪の価値』『開催の意義』が、どんどん色あせていく。【首藤正徳】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)



