「入れ替え戦が中止になったプロセスを詳しく説明してほしいんです」。2部ヴォレアス北海道をサポートする地元企業社長の富山浩樹さんの声には、怒気が全く混じっていなかった。バレーボール男子Vリーグの入れ替え戦が無観客開催から一転、中止となった理由をただ知りたい一心だ。選手らを想う切実な訴えが心に響いた。

北海道と1部VC長野の入れ替え戦(14、15日・大阪)が、新型コロナウイルスの影響を受け中止になった。日本バレーボールリーグ機構は元々、無観客で行う予定だった。先行きが不透明な社会情勢、延期する場合の日程や会場確保のめどが付かないことを理由に方針を変更した。入れ替え戦の中止は、東日本大震災のあった10-11年シーズン以来。この場合、両チームは来季も今季所属するリーグで戦うことになる。

今回の決定に異議を唱えたのが富山さんだ。インターネット署名サイト「Change.org」で、同機構に丁寧な説明と方針の撤回を求める活動を始めた。23日までに2500人以上から賛同者が集まった。北海道のチーム関係者とも相談し、今後1、2週間署名活動を継続する。その後、賛同者の名を添えて同機構に提出する考えだ。

富山さんはバレーボールを通じて北海道を盛り上げる姿勢に共感し、今季からチームのサポートに加わった。昇格を目指して一丸となる選手や監督の熱量を感じていただけに、中止決定には悔しさが込み上げた。「新型コロナの影響を重く受け止めるのは分かるが、選手や関係者のことを考えるとやるせない」と柔軟な対応を求める。

チーム側でも行動を起こし、大会延期などを求める緊急要望書を同機構に提出した。同機構からは、この要望を含め大半を退けるとの判断を下された。北海道の降旗雄平GMは「1部昇格を置き土産に引退の意向を示していた選手もいた」と明かす。来季2部で戦うことになれば、選手たちのモチベーションやチーム運営にも影響は必至。チームは再度、要望書を提出して同機構と協議する考えだ。

一方、このままなら1部残留となるVC長野も複雑な心境を抱えながら見守っていた。笹川星哉GMは「対戦チームの気持ちを考えると、中止発表の段階でお話しすることは難しかった」と心情を吐露。中止決定後には「逃げるな」「何で(試合を)やらないの」など抗議電話も相次いだ。「入替戦に向けてしっかりと準備をしてきた部分もあったので、しっかり勝って残留を決めたかった」と述べた。

無観客か、延期か、中止か。新型コロナウイルスを巡る対応には、はっきりとした正解がないのも事実だ。各スポーツ競技の団体が、この苦難に頭を悩ませながら決断を下している。取材していて日々実感するからこそ、決断に至った経緯を具体的でより丁寧に説明する必要があると感じる。

署名活動をする富山さんは「(日本バレーボールリーグ機構には)両チームが納得できる対応をしてほしい。今のままでは納得できない」と訴える。富山さんは、同機構の今後の対応を注視している。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)