国際オリンピック委員会(IOC)が20年東京五輪の暑熱対策として、マラソン、競歩の開催場所を東京から札幌に変更する案を検討したことを受け、日本陸連の河野匡長距離マラソンディレクターは突然の展開に困惑し、また疑問を呈した。

「決まるまで静観をするしかない」とした上で「マラソンのチケットが当たって喜んでいた人も聞いていたのに、それを今から振り出しに戻すことをできるのかと」と困惑した。

IOCは東京から札幌に場所を変える提案をした理由について「気温が5~6度ほど低い」などとしている。しかし、選手にとっての条件は気温以外の要素が絡むのも事実。河野ディレクターは「単に気温だけを見ているのか」と話し、札幌の街並み、8月朝の天候を指摘し、疑問を呈した。

「東京の朝6時は太陽の位置が低く、ビル影が多い。直射日光は7割ぐらいカバーをされている。しかし、札幌はビル影が少なく、直射日光を浴びる。しかも夜明けは早く、太陽が早く上がる分、気温が上がるのも早い」。

日本陸連はマラソンの代表選考レース「マラソン・グランドチャンピオンシップ」を五輪本番と発着点以外同じコースで実施するなど、地の利を生かした強化策を施してきた。1年後に女子マラソンが開催される8月2日には日本陸連と連携を図っている気象予報会社ウィザーニューズがコースの日陰を測定。日陰をあらかじめ認識し、体力の消耗を抑える術を探っていた。もちろん蓄積された暑熱対策は、今後も生きる。とはいえ、スタート時間が早まるどころか、コース自体が白紙に戻れば、日陰の準備、勝負のポイントなどコース戦略の巻き戻しを余儀なくされる。