女子テニスで2度の4大大会優勝を誇る世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が26日、米ウィスコンシン州で23日に起きた警官による黒人男性銃撃事件に対し、SNSに抗議に同調する声明文を投稿し、27日に予定されていたウエスタン・アンド・サザン・オープン(ニューヨーク)の準決勝を棄権した。大坂は、26日の準々決勝で同20位のコンタベイト(エストニア)に逆転勝ちし4強入りしていた。大会も抗議の意味を込めて、27日の試合は実施せず、28日に再開すると発表。抗議行動は米国スポーツ界に一気に広がった。

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突然の表明だった。不調で気持ちが折れそうになりながら、必死で踏みとどまって逆転につなげた準々決勝。試合終了1時間後に、オンライン会見もこなした。この時は、問題への言及はなかったが、約4時間後、抗議に同調するメッセージをツイッターなどで発信。そして、27日に予定されていた準決勝を棄権した。

ハイチ出身の父レオナルド・フランソワさんと日本人の母、環さんの間に生まれ、3歳から暮らす米国で人種差別反対の姿勢を見せてきた。声明には、人種差別に対する自分の立ち位置と、切実な思いが込められていた。「私は、アスリートである前に、1人の黒人女性です。そして、1人の黒人女性として、自分のテニスを見てもらうよりも、ずっと重要なことがあると思っています」と訴えた。

今回の事件に対して「胃が痛くなる、ヘドが出るような気持ち」と、強い言葉で不快感を表した。そして、「このようなことをいつまで続ければいいのか。いつ終わるのか」と悲しく強い言葉で締めくくっている。大坂のマネジメント会社は「棄権は、本人の意思として、黒人男性銃撃事件への抗議のため」とした。新型コロナウイルスの影響でツアーが中断していた期間は、米ミネソタ州で起きた黒人男性暴行死事件に対する抗議デモにも参加。SNSで「もうシャイは終わり。言いたいことを我慢するのは嫌」と表明するなど、積極的に発信していた。

大会も、即座に反応した。世界ツアーを統括する男子のプロテニス協会(ATP)、女子の女子テニス協会(WTA)、そして主催の米国テニス協会(USTA)は、3団体共同で声明を発表。「テニス界は一致団結して人種差別や社会的な不平等に抗議する」として、27日は試合を行わないことを決めた。

黒人への過剰な暴力として顕在化する米社会の人種問題への抗議活動が、激しいうねりとなって、米国スポーツ界でも、一気に広がっている。大坂の棄権は、1つの大きなきっかけになろうとしている。