【ノーウッド=阿部健吾】ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(22=シスメックス)が、フリーも1位の145・89点、合計217・61点で国外でのGPシリーズ初優勝を飾った。昨季は北京五輪で銅、世界選手権では優勝も果たした。「世界女王」。そんな肩書にも、変わらぬ競技への向き合い方を印象付けた。SP8位の松生理乃(中京大)は体調不良で棄権。アイスダンスの村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)は6位だった。

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坂本が指南役だった。表彰式、7歳下で2位のレビトに優しく教えていた。メダルを顔の横に掲げての、定番のポーズ。「うれしい。やっと5回目にして優勝できたので、すごく今はうれしいです」。海外でのGP初優勝になったが、数々の表彰台に上がってきた。撮られ方も板につく。

「どうしてもファイナルに行きたい気持ちがある。優勝しておきたかった」。スピードを落とすことなく跳ぶいつものダブルアクセル(2回転半)。冒頭の1本で、会場が沸いた。中盤のスピンでも、回転が増すにつれて歓声が膨らむ。「すごくて、自分もうわーとなってしまいそうでした」。全身で浴びながら、最後のスピン2つも最高難度レベル4でまとめ、最高潮に盛り上げた。

世界女王への期待感が満ち、それに応えてみせたが、本人は肩書には縛られてない。

前日のSP後だった。「うそやろ!」と取材エリアで笑顔で叫んだ。感覚的にはエッジ違反だった3回転ルッツに、減点がついていなかった。「これがもし、去年そこまで成績出せてなかったら、取られてたんだろうな」。決して審判への疑問ではない。「自分も納得して、なおかつやっぱりみなさんの判断も良かったら、やっぱりそれがベスト」。あくまでも、物差しは自分の感覚だ。

優勝を争ったレビトからは「すごいパワフルな滑りで憧れている」と告白された。一緒に写真に納まり、「直接憧れと言われるのがほとんど初めてだったので、すごくうれしかった」とニッコリ。そして続けた。「これから出てくる子なので、もうすごいライバル視していけたらいいなと思います!」。その言葉はとても爽やかだった。日本から生まれた6人目の世界女王は、いつまでも「坂本花織」のままだ。