【西武週間③松坂大輔の愛した店】「サンテオレ能見台店」のイカバーガーとコーラ

いつの時代も、いくつになっても…「つかの間」って大切ですよね。四六時中、人目にさらされるようになった平成の怪物にとっても、気の置けない仲間との空間は宝物だったはず。かけがえなき青春時代、情景が目に浮かぶコラムです。(2021年7月8日掲載。所属、年齢などは当時)

傑作選

樫本ゆき

★横高ファンの聖地

松坂大輔が高校時代から足しげく通ったハンバーガーショップがあった。「サンテオレ・能見台店」(横浜市金沢区)だ。

◆サンテオレ東京・杉並に本社を置く、ファストフードチェーン。かつては明治乳業が運営しており、関東を中心に100店舗を展開。1985年(昭60)のつくば万博にも出展した。現在は神奈川・日本大通り店と千葉・東金店の2店舗。コロッケバーガーは絶品で、東金店ではラーメン、クレープも販売している。

横浜高校時代、松坂ら練習で疲れた選手たちの胃袋を満たした〝憩いの場〟だった。成瀬善久、涌井秀章、筒香嘉智、近藤健介…店内には、国内外で活躍する選手たちのサインや寄せ書きが壁じゅうに貼ってあり、練習試合を観戦した横浜高校ファンが立ち寄る名スポットにもなっていた。

2015年3月。消費税8%増税のあおりを受け30年の営業にピリオドを打って閉店。最後は松坂と同級生の後藤武敏、元DeNAの荒波翔、タレントの上地雄輔らがユニホームを持って駆けつけた。

店内には、98年春夏連覇の横浜高メンバー色紙も。全国からファンが訪れた

店内には、98年春夏連覇の横浜高メンバー色紙も。全国からファンが訪れた

横浜の選手たちを、息子のようにかわいがってきたマネジャーの大塚幸子さん(71)は、思い出を口にする。

「引退するなんてショック。涙が出るね。あの代の子たちは、顔見れば31人全員わかるわよ。ビデオを見ては、思い出ばかり浸ってる。仲のいい代だったからね」

定番は「柔らかイカバーガーとコカ・コーラ」。プロ入り後も「大塚ちゃんコンチハ!」とひょっこり顔を見せに来たそうだ。

★「照れ屋なの」

「マツ(松坂の愛称)は、必ず親友を1人連れてくるの。その子を先に店に行かせて、私がいるかどうかを確認してから、ソッと中に入ってきた。照れ屋なの。注目されて疲れていたのかも。私は黙ってイカバーガーを出すだけでした」

人情あふれる店だった。当時、悩みや愚痴を吐ける相手が大塚さんだった。「体に気をつけて、引退後は家族と幸せに過ごして欲しいね」。最後は涙声でつぶやいた。