北京オリンピック(五輪)フィギュアスケート男子フリーが10日、首都体育館で行われる。ショートプログラム(SP)8位と出遅れた羽生結弦(27=ANA)が9日、公式練習に参加。世界初成功を目指すクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に「天と地と」の冒頭で挑んだ後に3回転半-3回転ループを初導入。昨年末の全日本選手権からジャンプの基礎点を4・00点上乗せした自己最高難度の新構成で巻き返しを図る。日本時間の午後1時14分ごろ登場予定だ。

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まさかのSP8位から一夜明けた羽生が、いきなりトップギアで練習した。氷に乗った瞬間、全力滑走。リンク中央で大きく旋回した。穏やかだったSP前と違い、目つきは鋭く、表情も険しい。逆境で闘志に火がついたのか、開始からすぐ日本選手団ジャージーを脱ぎ、中盤から半袖になった。「クッ」と声が漏れるほど上半身を絞める動きを強く繰り返し、熱く試したのが勝負の新構成だった。

昨年末の全日本選手権で入れていなかった4回転ループ、さらに3回転半-3回転ループを試した。難度を上げ、より高い基礎点を取りにいく。その覚悟を曲かけ練習で明らかにした。

冒頭は、もちろん4回転半。五輪史上初の挑戦者になる。練習ではやや回転が足りず、両足着氷だった。続いて4回転サルコー。SPでは氷上の穴に阻まれた技を跳び、その次が新コンビネーションだった。3番目の2連続ジャンプに3回転半-3回転ループを初導入。もともと3回転半-2回転トーループだったセカンドを3回転ループとし、さらに4番目を3回転のループからフリップにした。これで基礎点は前者が3・6点、後者が0・4点の計4点が上がる。ジャンプの基礎点は合計80点となって19年GPファイナルの79・73点を上回る、自身最高難度の構成で巻き返す気だ。

4回転半に挑む過程で3回転半に余裕が生まれた、羽生だけの2連続。全日本の公式練習で成功しながら当時は組み込まなかったジャンプを五輪で解禁する。曲かけでは跳ばなかった4回転ループも注目される。

この日は4回転半に5度トライ。全日本から踏み切りも変えた。カウンター(体を反転させる動き)から跳んで軸を安定させていたが、今回は正面から入って助走を長くした。勢いを増した最後に激しく転倒。昨秋負傷した右足首を痛め「いってー」と顔をゆがませた。それでも切り上げず最後の1人まで練習した。

フリーの最終組となるSP6位以内を個人戦で逃すのは13年世界選手権以来9年ぶり。首位チェンと18・82点差の逆境だが、諦めない姿勢を新構成に込めた。最後、取材エリアを通過する際には「ありがとうございます。明日、頑張ります」。報道陣から「足は大丈夫ですか?」と声掛けされると、左の拳を突き上げた。覚悟は決めた。夢の4回転半を決める舞台は五輪がふさわしい。【木下淳】