銅メダルと躍進した坂本花織(21=シスメックス)は、裏表のない性格で年齢問わず愛される。「花織」の由来は一回り以上離れた2人の姉。しっかり者の長女の名前から「aoi」の母音を、ひょうきん者な次女から「花」の漢字をとった。目に見える明るさに芯を併せ持った「花織」の人柄を、神戸市内の実家近くで自転車店「BIG MOUNTAIN」を営む村山千春さん(45)が明かした。【取材・構成=松本航】

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「フィギュアスケートやってるねん!」

坂本家の2番目のお姉さんと一緒のスポーツ用品店で働いていて、そこに家族で来られたのが出会いのきっかけでした。小学生の花織ちゃんに「頑張らないとね~」と話していて、3年生になった頃に店を開店。自転車の修理はもちろん、カウンターで勉強したり、そこで寝ていたこともありました。

うちのお客さんはよく「本当、そのまんまなんだね」と言います。4年前の平昌オリンピック(五輪)前後でしょうか。店が小学校の通学路に面していて、花織ちゃんが偶然いた時と登校時間が重なりました。小学生は「坂本選手だ! サインください!」と気づくんです。リラックスしている時間でも「いいよ~」と笑顔でペンを走らせる。日本一になっても、五輪に出ても、そのプライドは全く出さない。私はそれがうれしいです。

小学生の頃も、今も、かける言葉は変わりません。自転車で来ていたのが、運転免許を取って軽自動車に変わりましたが「ホントに気を付けてや」。そして「楽しんでね~」ぐらい。「今、何食べたい?」と聞くと、いつも「焼き肉」って答えます。体重管理があって、食べたくても我慢しているのを知っている。十二分に頑張っているから「頑張って」とは言いません。

平昌五輪は坂本家と一緒に現地で応援しました。お父さんと「絶対に北京も応援に行こうね」と言っていたけれど、コロナ禍での開催で家族さえ見に行くことができないと聞きました。花織ちゃんを含めた坂本姉妹と「お疲れさま会」をしてから、もう4年。ドキドキしながら日本でテレビ観戦し花織ちゃんの強さを再確認しました。帰ってきてスケートが落ち着いた頃には、もちろん焼き肉を食べながら、みんなでねぎらえたらいいなと思っています。