陸上からパラトライアスロンに転向した谷真海(35=サントリー)が、2020年東京パラリンピックの金メダル候補になった。本格転向した今季は世界シリーズなどで4戦全勝。圧倒的な強さを見せている。昨年のリオデジャネイロ大会自転車(視覚障害)銀メダルの鹿沼由理恵(36=ウイッツコミュニティ)も転向を表明するなど布陣も充実してきた。東京大会開幕まで、あす25日で3年。リオで0個に終わった金メダルを、パラトライアスロンが日本にもたらす。

■今季世界で4戦4勝 「自信になる」

 本格的に競技に参戦してから半年、谷はすっかりトライアスリートの顔になった。7月28日にカナダのエドモントンで行われた世界パラトライアスロン・シリーズで優勝。「転向してから4戦、負けなしでこられたのは自信になる」。持ち前の笑顔で話した。

 04年アテネから3大会連続パラリンピック出場。陸上競技の走り幅跳びで世界と戦った。13年世界選手権では銅メダルも獲得した。結婚、出産を経て競技復帰を考えた時、選んだのがトライアスロンだった。「長く続けられる競技だし、興味はあった」と話した。

 12、13年にも横浜で世界シリーズに出場したが「あれはお試しだった」。昨年1月に転向を表明。今年に入ってからコーチや専属トレーナー、栄養士らの「チーム・マミ」で本格的に東京大会へのスタートを切った。4月のアジア選手権から4連勝。世界ランクは一気に2位まで上昇し、3年後の優勝候補になった。

 「ラッキーもあったし、まだまだ力は足りない」と話す。まだまだ競技人口の多くないパラトライアスロン。エドモントンの大会は出場2人だったし、アジア選手権は1人だった。リオ大会後にクラス分けが変更され、有利になった。それでも、日本トライアスロン連合の富川理充パラ対策チームリーダーは「まだまだ伸びしろはある。東京では世界のトップを」と期待する。

 課題は義足を付け替える必要があるトランジション(種目変更)。スイムやバイクのリードを、ここで縮められる。もっとも、本人は前向きだ。「まず地力をつけたい。トランジションは最後にタイムを縮めるために、そのままでもいいかなと思って」と笑う。リオ大会で金メダル0に終わった日本チーム。プレゼンターとして大会招致に尽力した谷が、今度はアスリートとして日本を引っ張る。【荻島弘一】

 ◆パラトライアスロン スイム750メートル、バイク20キロ、ラン5キロと五輪種目の半分の距離で、リオから正式競技になった。座位、立位、視覚障害に分かれ男女各6クラス。座位はハンドバイク、車いすが使用される。視覚障害は同性のガイドがつく。東京大会の実施クラスは9月に発表される予定。世界トライアスロン連合(ITU)同様に、日本トライアスロン連合(JTU)がパラ競技を管轄するのが強みで、競技環境の良さから他競技からの転向組も多い。車いすマラソンの土田和歌子(42)も強化指定選手になっている。

<自転車リオ銀 鹿沼由理恵も>

 「メダルの究極が金ならば、肉体の究極はトライアスロンだと思います」。鹿沼はこんな表現で競技転向の意向を明らかにした。銀メダルを獲得したリオ以降、自転車競技には出場していない。新たな挑戦へ静かに準備を進めている。

 昨年末から複数回の手術を受けた。両腕の神経まひ。自転車で体勢維持のために強くハンドルを握り続けたことで手首の神経が筋肉、骨と癒着。リオ前から違和感はあったという。今も手を開く際に力が入らず、今後も手術が予定されるが「もう慣れました」と笑う。治療と並行して複数のマラソン大会に出場し、スイムの練習も重ねてきた。

 距離スキーでバンクーバー・パラ7位入賞も左肩のケガで自転車に転じた鹿沼。故障とも闘いながら来年のトライアスロンデビューを目指している。

<秦由加子はリオ6位>

 リオ大会のPT2(下肢障害)で6位に入った秦由加子(36)は、東京で表彰台を目指す。スイムが得意なのは、もともと競泳選手だから。競泳強化指定選手として12年ロンドンパラリンピックを目指したが届かず、翌年にトライアスロンに転向した。強豪ぞろいの激戦区で、世界ランクは4位。「まだまだやることがある」と話していた。