21年東京大会を含め、パラリンピックで4個の金メダルを獲得した車いすテニス男子の国枝慎吾さん(39=ユニクロ)が17日、首相官邸で行われた国民栄誉賞表彰式に出席した。1977年の賞創設以来28例目。4大大会(グランドスラム)完全制覇とパラの金を合わせた「生涯ゴールデンスラム」でパラ選手としては初の受賞者となり、岸田文雄首相から記念盾などを授与された。恒例の副賞にはペア時計を希望し、愛夫人(39)への感謝を込めた。

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金のネクタイを締めた国枝さんは、晴れやかな表情で岸田首相から副賞を受け取った。約100万円というグランドセイコーのペア腕時計。年間グランドスラム10度のレジェンドが、数ある選択肢から選んだ理由は「やはり日頃から妻にはお世話になっていたし、特に最後の5年間は一緒にツアーを回って苦楽を共にしてきた。何か頂けるのであれば、妻も含めて喜びを分かち合いたい」。愛夫人と2人で受けた勲章だった。

フィギュアスケート男子の羽生結弦さん以来5年ぶり28例目。車いすテニス史上最多の現行4大大会50勝など輝ける実績を、岸田首相から「前人未到の快挙。パラスポーツの社会的認知度の拡大、発展に極めて顕著な貢献をし、広く国民に夢と感動、社会に明るい希望と勇気を与えてくれた」と称賛されると「受賞が決まった時も、まず隣にいた妻に伝えた」と感謝した。

続けて「先人の方々がいなければプレーする環境がなかった。クラブ、両親、妻、コーチたち、車いすテニスに関わってくれた全員で一緒に取った」と車いすテニス界全体への評価と受け止めた。

パラ初の受賞が何より感慨深い。「車いすテニスがどういったスポーツか、パラ全体も含め、東京2020大会でようやく伝えたいものが伝わったと思える瞬間になった。この日本でも認められた証し」。障がいの有無を超え、人間の可能性を示した自負を込めた。

「俺は最強だ」と心で唱え、世界の列強と渡り合ってきた。「弱気になった自分に打ち勝つ言葉を使う機会はなくなるけれど、新たな挑戦が始まる。健常者と同じように、障がいを負った方々も気軽にスポーツを楽しめる環境が整うことを願います。実現の助けに、この賞がつながれば」。さらなる地位向上へ、求道に終わりはない。【木下淳】

▼愛夫人 ここまでの道のりは決して簡単ではなくて、大変なこともたくさんあったんですけど、夫が今までやってきたことがこのような形で認めていただけて、うれしく思います。

◆国枝慎吾(くにえだ・しんご)1984年(昭59)2月21日、千葉県柏市生まれ。9歳の時に脊髄腫瘍で下半身まひに。小学6年で車いすテニスを始める。麗澤高-麗澤大。06年に初の世界ランキング1位。09年プロ転向。パラリンピックは5大会連続出場。シングルスは北京、ロンドン、東京大会で金3個(車いす男子最多)。ダブルスはアテネで金、北京とリオでは銅。世界1位のまま今年1月に現役引退。173センチ。